てる

ジャングル大帝のてるのレビュー・感想・評価

ジャングル大帝(1966年製作の映画)
3.7

1966年の作品だそうです。
これが単独の話しなのかと思っていたが、どうも違うらしい。1965年に放送されていたアニメの総集編だそうだ。
でも、話はまとまっていたし、面白かった。

手塚治虫の作品を観たいと思って観たのがこの作品だった。
ジャングル大帝のマンガを読んでみたかったのだが、アニメの方が手っ取り早いと思ったのだ。

ジャングル大帝の終わり方は知っている。最後に人間のために死ぬ。それは子どものときにアニメでやっていたのを観たことがある。
そのラストまでの経緯は全く覚えていなかったので観てみようと思った。
そう思ったのにこの作品はレオが子どもの頃の話しまでしか描かれていなかった。少し残念であったが、次の作品を観るモチベーションになるだろう。

レオが死んだ父親の代わりにジャングルの王様になる話し。
カフェなんか開いたりしちゃって、ディズニーのような可愛い世界観だった。
しかし、可愛いだけで終わらないのが手塚治虫作品だ。多くのエピソードが盛り込まれていた。どのエピソードも重い内容だったりする。
産まれて早々に親から離れ、なんとか海を渡り、ジャングルに着いても父親と比べられて邪険にされ、その後、諸々あって漸く認められてきたと思ったら、さすらいの死神と対決する。様々なエピソードがレオを王様に成長させていく。

死んだ父親の毛皮と対面するシーンが私には印象的だった。
そのシーンは最終的にはレオの気持ちが切り替わる転換点になるのだが、結構残酷な描写だよね。人間の手によって、オブジェにされた自身の父親の遺体と対面するって、人間に置き換えるとかなりグロテスクなシーンになる。ただ、それはアニメなので、言いっこなしだとは思うけど、気になってしまった。

さすらいの死神との対決で特訓をするシーンがある。
昔のアニメやマンガってこういうのよくあったよね。私は『鉄拳チンミ』を思い出した。特訓して強くなるって昔は王道だった。今は特訓なんかしなくてもチートというズルい言葉で全てが片付けられてしまう。
やっぱり努力っていいよね。努力せずに勝ち取れることなんてない。それは自然界の法則だよね。忘れてはいけないことだと思う。

手塚治虫の作品って画のタッチが可愛らしい。だけど、実際にマンガを読んでみると、グロテスクだったり、心理描写が細かく描かれていたりと、読んでいて辛くなる。
だけど、手塚治虫が描いている作品はどれもこれも人間味がある。体のいい誤魔化しや嘘がない。実際の人間であれば、そういう感情になるよなって感じさせる。
感情移入しやすいのだ。だからこそ読むのが辛くなるのだけど。
でも、それこそが、今もなお手塚治虫の作品が読まれ続けている理由なのだ思う。
次はリボンの騎士でも観ようかな。
てる

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