TAK44マグナム

ドッグ・ソルジャーのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

ドッグ・ソルジャー(2002年製作の映画)
3.5
スコットランドの奥深い森林。
演習のためにやってきた英軍の小隊が、伝説の人狼に襲われるアクションホラー。

監督・脚本は「ディセント」「ドゥームズデイ」のニール・マーシャル。
本作は処女作となりまして、この後に「ディセント」でヒットをとばし、大幅に増えたバジェットを任された「ドゥームズデイ」では、自身の好きな映画へのオマージュを詰め込みまくった挙句にごった煮映画となってしまいコケて(個人的には大好きな映画ですが)、現在はテレビドラマ中心に糊口をしのいでいるみたいですね。

軍隊VS人狼という設定は実に面白そう!
正体不明の人狼相手に、前半は森の中で逃げ惑い、後半は逃げ込んだ一軒家での籠城戦となります。
通常の弾丸では殺すことが出来ない不死身の人狼と絶望的な戦いを繰り広げているうちに、一人また一人と仲間が減ってゆきます。
序盤からテンポよく緊張感を持続できていて、そういった部分ではニール・マーシャルのスキルの高さをうかがわせますよ。
反面、雑な部分もかなり目立ちまして、人狼がどうして存在するのかといった説明は全てスルー、圧倒的なパワーを誇るはずの人狼が数人の兵士相手に攻めあぐねるのも、唯一登場する女子キャラクターが結局何を目的としていたのかも不明瞭なまま終わるのにも疑問符がつきます。

好意的に考えれば、必要以上に凝った背景を語らずに勢いを重視したともとれますが・・・。

人狼(狼男)映画というと、人間から狼に変身する過程を売り物にしたものが多く、人狼側視点でのドラマや、そのキャラクター性を描いているのが普通なのですが、本作における人狼は殆どゾンビと同様の扱いであって、ただただ人間を襲って喰らう未知のモンスターとしてしか機能していません。
つまり、スタイルとしては掃いて捨てるほどあるゾンビ映画の域を出ていないながら、人狼映画としては比較的珍しいタイプといった風に捉えることが出来るでしょう。

予算はないので流行りのCGは使わず、人狼はすべて安っぽい着ぐるみスーツ。下手したら、ショッカー怪人の方が数倍よく出来てます。
頭部だけはそれっぽく作って、ボディの方は結構テキトーな仕上がりのスーツですが、そんな粗を隠すためなんでしょうね、素早いカット割りや終始暗い画面で誤魔化しているのがミエミエです(汗)。

しかしながら人狼を人間が演じている事によって、低予算映画のCGにありがちな「実在感の薄さ」をカヴァーしており、生物としての生々しさが強調され、良い具合に与太話にリアルさを与えることに成功しています。
ただ、人狼の姿をじっくりと観察できる場面がまったく無いのは、かなりストレスが溜まりましたね。

他の不満点としては、部隊の連中の背格好がみんな似ているので、誰が誰で、生きているのか死んでいるのか良く分からなくなる部分があるところ。
まだ監督が不慣れということもあったのかもしれませんが、カットの繋ぎがうまくないので何がどうなっているのか、特に籠城中に襲撃される場面で理解し辛らかったです。
軍隊と人狼がガチンコで殺し合うのを見せる映画なのに、その肝心かなめの戦闘場面がゴチャゴチャしているのは決定的にダメ。もう少し緩急をつけて、じっくりと見せるべきところは見せてほしかった。
あと、本作はあくまでホラー映画の範疇だと思うのですが、BGMが全体的に戦争映画風で違和感をおぼえました。

ゴア描写もそこそこで(内臓が飛び出ちゃうとか、小腸を犬が引っ張るギャグなんかはあります)、期待したより普通な出来で残念でしたが、台詞まわしの軽妙さやブラック風味なオチなど、センスある脚本は悪くありません。
是非とも、ニール・マーシャルには再び映画を撮ってもらいたいです。
もし同じ路線でいくなら、今度は(「ドゥームズデイ」とは違った意味で)もっと突き抜けてブッ飛んだ内容にチャレンジしてほしい!

ちなみに、冒頭の主人公が特殊部隊の選考を受ける場面で、犬を撃てと命令されて主人公は拒否するんですけど、そういえば「キングスマン」でも同様の場面があったな、と思い出した次第。
他の映画や小説などでもありそうな感じですけど、もしかして本作が元ネタだったのかな?と一瞬、頭に浮かびました。

最後に、DVDの画質が悪いので、余計に暗い場面で何がどうなっているのか分かり辛いです。
ざらつきは雰囲気なので良いとして、もう少し明度を上げたHDリマスター版を出来ればブルーレイで出してほしいですね。


セルDVDにて