広島カップ

太平洋ひとりぼっちの広島カップのレビュー・感想・評価

太平洋ひとりぼっち(1963年製作の映画)
4.0
1962年、西宮の港から小型ヨットで太平洋横断の航海に出た冒険家堀江謙一の物語。
日本の法律では小さいヨットで国外に出ることが違法だった頃の話。

冒険に憧れる若者にとって非常に魅力的な作品ではないでしょうか。
冒険といってもインディ・ジョーンズのような話では当然なく、こうした冒険に付きものの危険とヒリヒリする孤独感の描写が前面に出ています。

狭い船内のトランジスタラジオから流れて来た村田英雄の「王将」を聴きながら替え歌を歌い涙ぐむ主人公のシーンが胸に来ます。
自分が好きなように生きているようで周りの人々にも気を使っているのですね。

♪吹けばとぶような
 小さなヨットに
 賭けた命を
 笑わば笑え

サンフランシスコに着いたら留置所に入れられると思っていた堀江は幸いにも日本領事館に留められます。
そこで三ヶ月ぶりに浸かった風呂のバスタブに沢山浮かんだ垢のアップや、ベットの上でうつ伏せになって泥のように眠る裕次郎のラストシーンが堀江の全身全霊ぶりを良く現わしていて胸を打ちました。
孤独な冒険家の安息の時という感じが見事に表現されています。

こうした冒険家の系譜は平成の時代の若者にもあり、やはり太平洋を超えてロスアンゼルスに渡った野茂英雄にも同じ匂いを感じます。
令和にも誰か出るかな?きっと出ると信じています。
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