キヲシ

県警対組織暴力のキヲシのネタバレレビュー・内容・結末

県警対組織暴力(1975年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

大西ゆかりの歌で知って鑑賞したが、ほぼ「仁義なき戦い」のスタッフとキャストでさらに俯瞰した世界が精緻に描写された傑作。様々な死に様を描いて来た深作監督だが、アパートの二階に情婦と籠もる密告者を刺殺する場面は強烈。玄関で女の陰から覗き、そのまま上がり込み、逃げ惑う赤いネグリジェ、右に左に何度となく襲う。腹に突き立つ包丁のアップ。テレビからは「こんにちは赤ちゃん」が流れ続ける…。二課の刑事菅原文太は冒頭から若い衆をしばき倒す。ダンヒルのライター。組長代理の松方弘樹が自らハンドルを握り、警察署の前で執拗に車をぶつける。引き抜かれたキャバレーの女。二人の過去はコントラストの強いモノクロ画面の中、それぞれのアップショットの奥にもう一人。食べ終えた食器を丁寧に洗う。金子信雄が元極道の市議、成田三樹夫は金子と同席する組長、田中邦衛が松方の組長の刑務所での付き人?…なんとも怪しい男役で傷跡を残す。一見しょぼくれた二課の佐野浅夫。上司に食ってかかり何度も畳に叩きつけられ、辞めてからの転身…なんとも強か。県警の梅宮辰夫がその上司、ある意味正しいのだが…松方、菅原の最後に比べ、「さあ体操しよう」だと!この後味!笠原和夫の脚本は細部を呼応させて大きな流れを作り、深作の演出は荒々しくも丁寧、配役も文句なし。これぞ完結編。
追記 「仁義なき」シリーズでのし上がった川谷拓三が、事務所、取調室、トイレで変幻自在全てさらけ出す迫真の演技を見せる。
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