キヲシ

ア・ホーマンスのキヲシのレビュー・感想・評価

ア・ホーマンス(1986年製作の映画)
3.5
松葉杖を振り回すヤクザ片桐竜次が「山崎、お前いい顔つきになったな」。映画初出演の石橋凌が「筋者でもねえ素人でもねえ犬ころでもねえ困ったな」、「人間ですよ」大型バイクの横で寝袋に包まれた松田優作が答える。風俗店のホステスを後ろに乗せて夜の街をバイクで走る、超スロー撮影で気持ちE。ストーブの灯りだけの部屋、サングラスで胡座をかいた松田がホステスを抱き寄せる。取引相手の「また水上バス乗ろうや」に導かれ、夜の闇の海上、少し離れた席に着く松田と石橋。小林稔侍扮する刑事の取り調べを受ける松田の後ろ姿を窓越し立木越しに左に横移動、カット挟んで少し近付いた位置から窓の蔓と枯れ葉越しに右に横移動。代貸ポール牧登場!「カッテニ、ハジケルナヨ」監督北野武以前のこのキャスティングは見事。「おいしい」と呟く石橋と手塚理美の食事。それだけに上から捉えたキッチンに横たわる手塚と牧は強烈。「うっ」剃刀。夜のビルディングがぐらぐら揺れて回転するショット。オールバック、サングラスで決めていた石橋が、白いワイシャツ姿で現れる。ラストにARB「アフター1945」。音楽は松田優作のアルバム「デジャビュ」のバックバンドEXから奈良敏博、羽山伸也。この素晴らしいサントラはよく聴いたものだ。映画はレンタルビデオで一度見ただけだが、驚くほど憶えていた。自身を上手く扱えていないとか、浮浪者と阿木燿子とメカは要らないから石橋との関係をもっととか…あるのだが、やはり好きな作品。
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