イチロヲ

アフリカの光のイチロヲのレビュー・感想・評価

アフリカの光(1975年製作の映画)
4.5
アフリカへの渡航を夢見ている青年コンビ(萩原健一&田中邦衛)が、漁師町の有象無象に巻き込まれていく。丸山健二の同名小説を映像化している、ヒューマン・ドラマ。日活の神代辰巳が東宝に招聘されている。ロケ地は北海道羅臼町。

前作「青春の蹉跌」に引き続き、厭世をテーマに取っている作品。日本という狭っ苦しい世界からの脱却が主人公の行動理念となっているのだが、小さな漁師町における偶像劇に人間的情緒が集約されていることを、本編ドラマが暗示させていく。

主人公に絡んでくる地元の人間は、余所者に厳しい若衆(峰岸徹)、裏賭博に手を染めている親分(藤竜也)、大人の営みに興味津々な少女(高橋洋子)、自由主義者のホステス嬢(桃井かおり)など。小池朝雄が神代作品に顔を出すところが何気に貴重。

主人公コンビに、ニヒリズムとバイセクシャル(=一心同体)が内包されており、神代作品特有の即興性を楽しむことができる。そして、自分の殻を破れそうで破れない、進んでは戻りのやるせなさが、ひしひしと伝わってくる。
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