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君のためなら千回でものkerolineのレビュー・感想・評価

君のためなら千回でも(2007年製作の映画)
4.5
この作品に込められた深意は2つある。
”歪んだ少年愛” と ”民族差別”だ。

アフガニスタンにはbacha bazi(バチャ バジ)と呼ばれる”お稚児さん遊びの文化”が存在する。
女装をさせたティーンエイジの少年に芸妓や夜伽をさせる風習である。
顎鬚の生え揃っていない少年は男でも女でもない。
つまり、婚外性交をしても罰せられないという意識が古代より続いているのだ。
このお稚児さんの事をbachaという。
bachaたちの多くは貧しい少年たちである。
家族に売られた者、自ら望んで身を売った者、拉致されてbachaになった者など様々な背景を持つ。

bacha baziの文化を知った上でこの映画を観ると、より深く内容を理解出来ることだろう。

注視すべき一つ目のポイントは、
ハザーラ人少年がリンチを受けレイプされるシーンである。
暴行を加えたのはパシュトゥーン人の少年たちだ。
彼らパシュトゥーン人はアフガニスタンにおいて多数を占めている存在である。
そもそもアフガニスタンという国名は、ペルシャ語で「パシュトゥーン人の国」を意味する。
パシュトゥーン人が多数を占めるアフガニスタンにおいてハザーラ人は長年にわたり差別と迫害を受け続けているのだ。
貧困層の少年が慰み者になることは、当時は珍しいことではなかったようである。

二つ目のポイント
タリバン幹部の前で少年が踊るシーン。
鈴のアクセサリーを身に着けている。
これはbachaに施されるものだ。夜な夜な夜伽の相手をさせられているのであろう。
この少年は前出のハザーラ人少年の息子である。
前出の少年が子を持ち、時を経た2000年当時においても差別とbacha bazi文化は続いていたのだ。

この作品は
友情と家族愛、紛争への嫌厭だけでなく
アフガニスタンに古くから続いている歪な社会構造をも顕しているのだ。

2022年現在もアフガニスタンには同様の風習が続いている。
社会不安と貧困が続く限り、bacha baziは今後も存在し続けるであろう。

この作品の原題「The Kite Runner(凧を追うもの)」は
アフガニスタンの伝統的な遊戯である凧の糸切合戦が由来になっている。
少年たちが各々の凧を揚げ、互いの凧糸を切り合うことで勝負をするのだ。
この遊戯は今も少年たちの楽しみの一つになっている。
凧を追うアフガンの少年たちが少しでも幸せを追えるよう、願ってやまない。

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※酔ってる 下書き
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