こたつむり

崖っぷちの男のこたつむりのレビュー・感想・評価

崖っぷちの男(2011年製作の映画)
4.1
♪ 傷だらけの腕を 高く振りあげて
  反省も弁解も 受けつけられない

無骨なタイトルですよねえ。
せめて「崖っぷちの男~弟の彼女のナイスバディに萌える102分」くらいの色気を感じる副題が欲しいところ。それでも、どんな映画だか分かりませんけどね。少なくとも一定層の観客を惹きつけることは出来ますよね。

でもね。この無骨さが良いのです。
期待値が地面スレスレになりますからね。
「こんな味気ないタイトルで本当に面白いのか?」と首を傾げて臨むくらいがちょうど良いのです。

しかも、冒頭はモッサリ気味の展開。
「あ、これはやっぱりハズレだぞ。完全にB級だぞ」と思わせる作戦なのでしょう。そして、B級であるのも事実。正直なところ“もっと違う展開”があったと思います。

しかし、大切なのは“そこ”じゃあなくて。
高層ビルから飛び降りようとする主人公の心情に沿うのではなく、頭を空っぽにして、目まぐるしく変わる展開に飛び乗るだけで良いのです(ついでに箸休めとして弟の彼女に萌える)。

何よりも大切にしたいのはプロの心意気。
自信を失ってから再生するために必要なのは“自分をもう一度信じること”。それをサラリと感じさせる筆致は、まさに“わかる人にはわかる”大人の滋味と言っても過言ではありません。

あと、個人的にツボだったのは配役。
主人公も、主人公の弟も、弟の彼女も、主人公と対峙する刑事も、かつての相棒も“何処かで見たような顔”なんですが名前は出てこなくて…そんな人たちが織り成す物語は極上のB級品。エド・ハリスのビッグネームも霞むほどのバランスが素敵でした。

まあ、そんなわけで。
垢抜けないタイトルで損をしている作品。
B級ながらも、色々と頑張っているのは伝わってきますので、その辺りを楽しむのが吉です。先入観を振り払うのは容易じゃないですけどね。テンポが良いサスペンスをお探しならばオススメです。
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