イチロヲ

檻の中の妖精のイチロヲのレビュー・感想・評価

檻の中の妖精(1977年製作の映画)
3.5
憲兵により反乱分子の嫌疑をかけられた富豪夫人(谷ナオミ)が、身の潔白を証明するため、権力者による性的虐待を耐え抜いていく。訊問とは名ばかりのSMプレイを描いている、日活ロマンポルノ。団鬼六原作。

体制に抗いたくても抗えない、一般庶民の苦痛を「信頼関係の存在しないSMプレイ」に置き換えている作品。谷ナオミはその場の空気に流されるだけの人形となっているが、その背景には「マゾヒズムを武器にして闘う女性」というモチーフが含まれている。

登場人物では、主人公と一緒にサディスティックな訊問を受ける歌舞伎役者(浜口竜哉)と、女の和服の脱がし方すら分からない童貞の上等兵(佐竹一男)が、目覚ましいばかりの芝居を見せてくれる。

本作における谷ナオミの凌辱ぶりは、もはや退廃芸術の領域。憲兵という奇異な存在が映像内にいるため、絵的な楽しさに満ち足りている。被虐待者でありながら「闘っている女」でもあるという、倒錯の深淵を感じ取ることもできる。
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