キヲシ

白いリボンのキヲシのレビュー・感想・評価

白いリボン(2009年製作の映画)
4.0
うーむ、なんというか、強度のある映画。正直、どういうこと?が多過ぎて、とても居心地が悪いのだが…わかった気にさせてたまるか、という意志を感じる。第一次大戦前、住民の多くが男爵の農園で働くドイツの小さな村が舞台。画面奥から駆けてくる男性を乗せた馬が、何かに躓き倒れ込み、男は放り出される(え?どうやって撮影したの?)。長回しのワンショット。牧師が食卓の大きなテーブルを前に説教を始め、罰として夕飯抜きと主犯らしき二人には「白いリボン」を結ぶことを命じる(牧師は知っていたのか?)。男女6人?ほどの子供らは両親にそれぞれ順に挨拶の口吻をして退場する。固定カメラの長回し。暇を出された男爵の元子守女性の実家を訪ねた教師。ずらりと並ぶ弟妹たちの前で語り合う二人。帰宅した父親に追い出される子供ら(ぞろぞろ並んで出て行く姿がおかしい)。一年待ってまだその気なら結婚を許す、という提案を受け入れる。長回し。馬車で湖へピクニックへ行こうとする移動でアップの長回しは、どのエピソードに続いたのか…。暗闇に浮かび上がる十字架のような窓枠。火事の夜、これは印象的だ。母親を事故で亡くした息子が母屋の扉から現れ、納屋を開けて変わり果てた父親を見つけ、無言のまま扉を閉めて母屋に戻る。緩やかに移動する長回し。ロングで棺桶を見送る人々と挨拶を交わす男(男爵?)、後ろに回り避ける男が一人。上手に手作りの笛を鳴らす男爵の息子が殴られ川に突き落とされて動かない、もうひとりが慌てて助け上げる。
教師の思わせぶりな独白とモノクロの端正な画面、ほぼワンシーンがワンショットと思える長回しで見てて肩が凝る。「白いリボン」の恐るべき子供たちの眼差し。看護師の子の視力の失われた目に巻かれる包帯と叫び。そして、毒舌医師の幼い息子(「死ぬってどういうこと?」)の瞳が出会ってしまう…鬼畜。この直前の暗い階段を降り「どこなの?」とうろうろして物音に気付くまでの息苦しさ。教会に集う人々を正面から捉えたラストの賛美歌…あーもやもやする。
キヲシ

キヲシ