イチロヲ

安藤昇のわが逃亡とSEXの記録のイチロヲのレビュー・感想・評価

4.0
全国指名手配中の安藤興業社長・安藤昇が、情婦のもとを渡り歩きながら、逃避行を繰り広げる。俳優転向以前、1958年の出来事を張本人による芝居で綴っている、実録映画。日活ロマンポルノの旗手、田中登監督が東映で製作している。

安藤昇は兵役と反体制運動の一連の流れを原体験としている人物。アナーキストかつニヒリストの人格が形成されており、平和ボケが進行した現在の日本に対して、鬱屈と反骨を爆発させてしまう。

本作は、一般庶民の日常とはかけ離れた世界に生きているアウトローの人間(その時代に生きた人間)を再確認するための作品。主人公と情婦の関係性を、鑑賞者に汲み取らせる語り口が面白い。

ロマンポルノと同じように「生きていることを実感するための行為としてのセックス」が描写されている。セックスと同じぐらいの分量で、食事シーンが登場するところも注目すべし。「ヤって、食って」の連続が生きている証。これは、絶対普遍。
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