三樹夫

実録外伝 大阪電撃作戦の三樹夫のレビュー・感想・評価

実録外伝 大阪電撃作戦(1976年製作の映画)
3.9
「西日本の流通の要となる大阪の利権を貪ろうとする者は後を絶たなかった」と酒井哲のナレーションでぶち上げ始まる。これは現代の話なのかな?実録ヤクザ路線の1960年代の大阪が舞台で、~でんがな、~だすとリアルでそんな喋り方してる奴見たことねぇぞというコッテコテの大阪弁が飛び出す。『日本暴力列島 京阪神殺しの軍団』は同じ題材で狩る側を描いた映画だったが、こちらは狩られる側が描かれている。
成田三樹夫がボクシング場を買い取りキャバレーにするとシマ荒らしを仕掛けてくる。成田三樹夫の裏で糸を引いているのは小林旭で、神戸の川田組(勿論山口組がモデル)が大阪へ進出するための切り込み隊長として成田三樹夫を利用しようとしていた。大阪の親分衆は完全にビビりあがるが、渡瀬恒彦と松方弘樹の大阪狂犬ヤクザ2匹が牙をむく。チンピラが丹波哲郎にちょっかいを出したことで、大阪での人間狩りが始まり渡瀬恒彦と松方弘樹が追い詰められていくという話。

この映画がやろうとしているのは青春映画というか渡瀬恒彦と松方弘樹のブロマンスだ。渡瀬恒彦と松方弘樹が仲良くなるきっかけが、ボクシングで殴り合いして打ち解けるという、番町同士の喧嘩みたいなきっかけで2人のブロマンスが始まる。それにしても冒頭のボクシングで突然松方弘樹がリングに上がり、ボクサーに蹴り入れ出したのは笑った。ニューシネマ感があるというか、終わり方がBGMも排して、何だったのこの抗争という終わり方をする。
神戸の強大な組織に大阪の狂犬2人が立ち向かう話だが、劇中描かれる狂犬エピソードが渡瀬恒彦が車のドアにしがみついて街中で引きずられると、これは狂犬だわと納得する。

合理的に作戦を立て班分けまでする神戸側に対して、どんちゃん騒ぎする大阪側の対比が良かった。
双竜会に在日のヤクザが多いことは、ホワイトボードでこいつらを狙うんやと説明しているシーンで書かれている名字から読み取ることが出来る。『日本暴力列島 京阪神殺しの軍団』ではそこのところを描写していたが、この映画では匂わすぐらいに留められている。

実録ヤクザ映画を観ていてふと思うのは、松方弘樹って誰?渡瀬恒彦って誰?小林旭って誰?という人が初めてこの映画を観た場合、話が理解できるのかということだ。南原組だの山地だの双竜会だのって名前だけで人物関係を把握できるのだろうか。私は実録ヤクザ映画を観る時はとりあえず役名は捨てて役者で識別している。作っている方も役名だけで観客が人物関係を理解できるとは思ってないだろうし、役者で識別するだろうことを見越してのスターシステムというのもあると思う。しかし出ている役者の多くが大分前に亡くなっていたりで、松方弘樹って誰?渡瀬恒彦って誰?小林旭って誰?となる人はもはや珍しいものではないが、そういう人が実録ヤクザ映画観たらどう思うのだろうと考えると夜も眠れない。
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