半兵衛

秘技・十八武芸拳法の半兵衛のレビュー・感想・評価

秘技・十八武芸拳法(1980年製作の映画)
4.0
妖術プラスカンフーという欲張りな組み合わせを見事に実現、映像化した豪勢な香港映画。妖術が大盤振る舞いで登場する漫画のような冒頭からテンションが上がりまくる。そして実在の武器や暗器が矢継ぎ早に次々と出て来るのも最高。

アヘン戦争以降の清(中国)を舞台に、話は義和団という実在する組織を裏切った男を暗殺するために様々な拳法の流派の使い手たちが捜索することになる。普通こういう映画は拳法の名人がターゲットの男と壮絶な死闘を繰り広げ、敗者は血みどろになりながら果てるという展開を想像するはず。ところがこの映画はこちらの予想を越えて、銃器を持つ外国人たちに対して素手で立ち向かうことに疑問を持ち組織を脱退したターゲットの男に感化され、あるいは病気となったところを助けられたりして刺客の何人かは彼の仲間になってしまうのだ。

そして義和団の刺客とターゲット、彼に味方する元刺客による拳法と妖術が織り成す超一流のアクションシーンがこれでもかと繰り広げられるのだけれど、なんと刺客は敗北しても特に殺されたり大怪我を負わされたりせずに普通に説得されて帰ってしまう。裏切った刺客の一人に彼の拳法の師匠が立ちふさがるといういかにも格闘漫画でありそうな展開があり期待するが、彼も説得によって無傷で撤退してしまう。暗殺メインの話なのにこれほどまでに人が死なない作品はこの映画ぐらいしか無いのでは?グロ描写も冒頭に少しあるだけなので子供にも安心して見せられる。

そしてラスト真の悪党が出現し、彼と主人公の刺客たちが様々な武器や妖術を交えて戦う展開が熱いのだが、その悪党も殺されず拳法で負けてしょげる悪党を前に主人公たちが笑いながら去るというほのぼのした雰囲気で映画が終わってしまう。一応悪党が後で組織から大目玉を食らうようなことを示唆はしているけれど、こんなおおらかで明るい気分で見ていられるカンフー映画は唯一無二だろうな。

途中命を狙われた男が人形を使って人間を操るという妖術を使い刺客と戦うのだが、その様子を見ていた人たちがなんと自分達もやってみたいと人形を取り合ってしまうのだ。レトロなゲームでバグったキャラクターのようにカクカク変な動きをしながら戦う姿に死ぬかと思うほど爆笑してしまった。こんなギャグマンガやアニメでしか出来ない表現を実写で実現する香港映画のスタッフの力量に感服する。
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