Rickyy

海がきこえるのRickyyのネタバレレビュー・内容・結末

海がきこえる(1993年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ああ、何という言葉で言い表せばいいだろうか。
この経験されないまま永久に失われてしまった瑞々しさ、イノセンス。優しくなろうとするが故の、素直になれなさ。
全ては過ぎてしまったことだけど(作中でも。私の人生における時期にしても。(笑))、その美しさ、手触り、空気の味、伝わってきたなあ。

まずは評判に納得の傑作ぶり。未成年飲酒シーンがあるからTVで流せないんですね。なんともったいない。注記してでも流してくれ。

杜崎くんの回想として語りは進められて、ラストで現時点に追いつく構成。
高知の景色の鮮やかさ、レイアウトの美しさにしみじみとしましたが、兵庫出身の同伴者は「あれは何もないってことなの。旅行で行けばいいけど住むところやない」と辛口でした。
ちなみに東京の描かれ方も素敵。吉祥寺や成城学園前が昔の駅舎だったり、都庁が旧庁舎だったり、90年代を感じ取れました。(筆者は99年生まれ)

親友を気遣ったり、自分の気持ちに気づけなかったり、女の子の強がりにちょけて返してしまったり、ある意味王道の思春期のあるあるがちょっとした事件として語られていくのですが、ヒロイン里伽子がちょうどよく自己中で、ちょっとメンヘラで、たまらなく不器用で愛おしい。
何で好きになってるのか分からないけど、好きになっちゃうよね、あれは。

またラスト手前の高知帰省〜同窓会がとても爽やかで素敵でした。何といっても携帯もなけりゃ、メールもないわけで、ちょっと喧嘩してしまって口をきかないままになってしまったりすると、今では簡単なことでも仲直りするのが難しかったりしたんだろうなと。そんな時代に、突然車で迎えにきて、昔に戻ったように話せて、ちゃんと謝れるって、松野お前〜〜〜どんだけいいやつなんだよ〜〜〜〜〜〜〜。
そして清水さん。あなたはなんて大人なの。でも意外と、たった半年でも、地方から大学になるタイミングで出てきた子ってすごい大人になるかも?とか思ったりしましたが、高校時代にいけすかないバチバチだったクラスメイトと、バッタリ会って、あの頃はそんなだったよねって一応はけじめをつけて普通に話せるって結構すごいぜ?二人とも綺麗になったね、心も。って誰か言うてあげてくれ。

俺には経験できなかった青春だし、時代も違うんだけど、やっぱりヒトごとには思わせないチカラがこの映画にはあります。駿さんもいいけど、こーゆー路線、もっと作っていいぞジブリ。いやむしろ作らないほうがいいのかジブリ。教えてくれジブリ。見ていない方はぜひ。
Rickyy

Rickyy