leyla

ペトラ・フォン・カントの苦い涙のleylaのレビュー・感想・評価

4.2
ファスビンダー監督が自身の戯曲を映画化しているだけあって、かなり舞台っぽい。登場人物の少ない室内劇を、壁一面に配した絵画とマネキンを使った演出、構図、ライティング、カメラワークによって奥行きを感じさせ、ドラマティックに見せているのがカッコいい。

愛に狂っていく様子がジーナ・ローランズを思わせるペトラ、ペトラに支配されるマレーネ、自分に夢中になるペトラを利用する俗な女性カーリン、3人の愛憎。

絵画の男根の前で愛や憎しみの言葉を交わす構図にウケた。タイプライターの音での意思表示、絵画と一体化したかのような構図が見事な誕生日のワンシーン、特にマレーネが荷物をまとめるラストは、構図と陰影と音楽がドラマティックで高揚しました。そういえば『アル中女の肖像』の鏡バリバリのシーンは今作の影響だった。

所有できないからこそ、愛にハマっていくマレーネとペトラは、正反対のようで実は根本は似ているのだと思えた。

「人間て俗悪よ」
「誰とも取り替えがきく」
愛の曖昧さをわかっていながらものめり込んでいき、結果として孤独になるペトラの悲劇。壁の絵画『ミダス王とバッカス』の王のように人間とはなんて愚かなんだろう…

(猫はOPだけ)
leyla

leyla