TAK44マグナム

極道恐怖大劇場 牛頭のTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

極道恐怖大劇場 牛頭(2003年製作の映画)
3.0
座っていても、たっているものはな〜んだ?


三池崇史監督が、「デヴィッド・リンチが仁侠モノを撮ったらこんなんなるんちゃう?」と哀川翔や吉野きみ佳にムチャやらせたVシネマ。
ジャンルは極道恐怖劇場という名のホラーとの事ですが、ホラー要素は限りなくゼロに近く、実際はルール無用な不条理モノ。

ホラーぽいのは、クライマックスで吉野きみ佳が◯◯◯を出産するところぐらいじゃないですかね?
並のホラーじゃ敵わないぐらい馬鹿馬鹿しくて笑えます。

まず前提として、本作をマトモな映画だと思って観ちゃダメです。
全編とおしてスキが全く無いぐらい狂っているので、解釈とか求めちゃいけません。
一部、完璧に意味不明なカットもあるので、作り手としては最初から真面目に筋が通ったドラマとして撮ろうなんて、たぶん思ってないのでしょう。
強いて言うなら寝ている時にみている夢、それも悪夢のようなものかもしれません。
テキトー且つ行きあたりばったりに継ぎ接ぎしまくった「ワケガワカラナイモノ」だという事を覚悟して観るなら観ましょう。
あと、名古屋に行きたくなくなるのも覚悟しましょう。
しかし、名古屋の方はこれ観て怒らんのか(苦笑)


冒頭、最近はカブトムシ好きなオジサンにしか見えない哀川翔が「あれはヤクザを襲うように訓練されたヤクザ犬です!殺られる前に殺らねえと!」と犬に因縁をつけ、可愛いチワワをいきなりビッタンビッタンとコンクリートに叩きつけ、分銅のようにグルングルンふり回してブチ殺しますよ!
こりゃついに狂ったか?!と仰天した石橋蓮司組長は、哀川翔を名古屋にある「ヤクザ処分場」送りにすることに決め、組員の曽根英樹に名古屋に連れて行くよう命じます。
道中でも哀川翔は「あれはヤクザを轢き殺すために設計されたヤクザカーだ!」などと言い出して、翔兄貴を敬愛する曽根英樹もさすがに大丈夫か、この人?とヒキ始めます。

そんな矢先、アクシデントから哀川翔がなんと死亡!
弱り果てた曽根英樹が喫茶店で茶碗蒸しを食べてトイレで吐いているうちに死んでいたはずの哀川翔の姿が消えちゃいまして、更に弱り果てた曽根英樹は地元ヤクザ?の火野正平(何故か野っ原でエロ本読んでる)の協力を得て捜索を開始!
最強に怪しさ暴発しまくりのカズマサ旅館に泊まり、何故か酒屋や米屋で聴き込みをし、どこであろうと名古屋特有の行き過ぎたサービス精神の要らぬ恩恵を受けてしまう曽根英樹!
気がおかしくなりそうと思っていたら、本当に気がおかしくなったのか、ついに眼前に現れる牛頭(ごず)!
はたして、哀川翔は生きているのか?
その答えは、丹波哲郎が仕切るヤクザ処分場にあるのか・・・?!


とにかく破天荒で、自分を哀川翔だと言い張る吉野きみ佳が登場してから輪を掛けてオカしくなってゆきます。
石橋蓮司の鉄板なバカエロオヤジ演技に酔いしれ、ゆっくりと股を開く吉野きみ佳のエロさ(さすがは後のMUTEKI!)に酔いしれ、人をくったどころじゃない異次元のラストに酔いしれる事しか出来なくなってしまうのDEATH!
「お湯をかけたら戻った」って、おまえはインスタント食品か!


・・・・・と、まあ何ちゅうか、てんこ盛りし過ぎて破綻しまくっておりますけれどね、不気味な過剰サービスに彩られた街「名古屋」を舞台とした極道地獄巡りもオツなもの。
コーヒー頼めば茶碗蒸し付属!
風呂に入ればババアが乱入!
出来もしない霊媒に鞭が唸り、死んだはずの男がトイレで唸る!
あの似顔絵?で「ああ、この人」と分かってくれる!
嗚呼、名古屋!なんてステキな街なんだ!


・・・はっきり言って何が何だかのオンパレードながら、役者はみんな全力投球で、これがプロ根性ってヤツかと感心しきりですよ。
あんなセリフ、台本読んだ時点で笑っちゃって演技にならないでしょう、フツー。

最終的には、洗面所に並んだ歯ブラシに心がホッコリしつつマサカマサカの大団円で、直後に流れる「牛頭の歌」が汚れた精神を浄化してくれるかのようでした(←いや、テキトーです(汗))
そう、死ねば地獄の極道にさえ、ときに天国は寛大なのでありました。お幸せに!
でも、デヴィッド・リンチは薄味だし、途中から仁侠関係ないんですけどね。目指した着地点とは若干ズレたようで。


因みに、はじまってすぐ、哀川翔が「これから俺が話すのは全部冗談なので信じないでください」と言うのは、作り手からのメッセージなのかもしれませんね。
2時間以上も尺があるのに、ぜんぶ冗談ですませようとは中々どうしてマジでどうかしとりますけどねえ〜(苦笑)


セルDVDにて