イチロヲ

さすらいの恋人 眩暈のイチロヲのレビュー・感想・評価

さすらいの恋人 眩暈(1978年製作の映画)
4.0
生きる価値を見いだせずにいる侘しい女性(小川恵)が、仲間の報復に戦々恐々としている訳あり青年(北見敏之)に遭遇する。世渡りが苦手な者同士の慰め合いを描いている、日活ロマンポルノ。中島みゆきの楽曲「わかれうた」をモチーフにしている。

ダメ男に対して「わたしがいなければ」と献身的になる女の物語。男と一緒に社会的底辺に堕ちても、底辺なりの充実した生活を保つために粉骨砕身する。ヒロインが必死にアゲマンを演じても、肝心の彼氏にはアゲマンが通じない、負のスパイラル。

高橋明が白黒ショーを主人公に勧める、狡辛い色事師を好演。主人公カップルが見世物に初挑戦するまでのシークエンスは、自身のセックスをネット配信する現在のカップルを想起させられる(もっとも現在のカップルはファッション感覚だろうけれど)。

底辺から上昇するため努力しても、結局は悲劇が待っている。アメリカン・ニューシネマ調の作風が、何とも切ない気持ちにさせてくれる。小川恵がニッコリと微笑むと、目が三角形になるところが可愛らしい。
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