イチロヲ

SADA 戯作・阿部定の生涯のイチロヲのレビュー・感想・評価

SADA 戯作・阿部定の生涯(1998年製作の映画)
4.0
永遠不変の愛情を欲している元娼婦の女性(黒木瞳)が、奉公先の主人(片岡鶴太郎)との愛欲生活に溺れてしまう。西澤裕子・著「SADA」を映像化している、エロティック・サスペンス。ベルリン国際映画祭・国際批評家連盟賞受賞。

昭和初期に発生した阿部定事件を「戯作の映画化」のようにアレンジ。登場人物がカメラ目線で口上を述べたり、文芸調の演出が挟み込まれたり、モノクロから人工着色のような映像に切り替わったりする。

基本的には阿部定の伝記がベースだが、不明瞭な部分を独自要素で補完させている。黒木瞳(当時38歳)が半生を演じており、綻びとなる部分を「戯作の映画化」でカバーしているところが面白い(ちなみに、定は31歳で事件を起こしている)。

「永遠の愛を得るということは、死地に近づくことでもある」の法則が踏襲されており、逮捕後の阿部定にウーマンリブを重ねるという、ある意味ベタな着地も鮮やかに決まっている。女優のヌードが出てこないのに、見たような気がする不思議。
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