老画家（坂本長利）の養女（山科ゆり）との縁談に応じることになった青年（風間杜夫）が、性倒錯の世界に落とされてしまう。トラディショナル京都を舞台に、異常性愛の乱反射状態を描いている、日活ロマンポルノ。「曼荼羅」ではなく「曼陀羅」表記。
「愛人を他人に預けることにより、嫉妬心を原動力にして、性的欲動を昂らせる」という、谷崎潤一郎にも通じる偏愛心理を扱っている作品。京都市内にてゲリラ撮影を敢行しており、アルペジオのギター音楽と併せて、独特な世界観が構築されている。
性倒錯へとターンオンしていく青年、魔性にチューンインしていく老画家、性観念のドロップアウトを目指そうとする養女。「主人もまた隷属者に隷属している」の法則が含まれており、魔性に翻弄される人間のジタバタ劇が精緻に描写されている。
野外セックスのロケ地は、伏見稲荷大社と化野（あだしの）念仏寺。小沼監督の伝記によると、偽物の撮影隊が住職の注意を引きつけている隙に、境内でこっそりと撮影したらしい。山科ゆりが全裸で抱きついていた石塔を探す旅に出たくなること請け合い。
