せいか

Emma エマのせいかのレビュー・感想・評価

Emma エマ(1996年製作の映画)
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8/8、Amazon videoで動画レンタルして視聴。

原作既読済み。とにかくただ原作読むことだけをおすすめする。それだけに観るのが苦痛の映画になっている。逆に全く知らないならほどほどのロマンスとして楽しめるのでは。つまり全く楽しめなかった。

すげーいろいろぶっ飛ばされて(というかほぼキャラクターが違うよな……)お節介仲立ち女なところだけ抽出みたいな感じになっている。すげえ。褒めてない。本来最初にあるはずの、エマの、結婚なんてしたくない!という、自らの立場だから言える本人はそれが分かっていない甘えも、家柄がどうとか他人がどうとかのこだわりの描写もそんな感じでとにかく丁寧に描かず、なんというか、本作、『エマ』風の何かって感じである。表面をなぞっているだけというか。なんなら結婚願望がありまくる女みたいになっている。友人への世話焼きや盲目さもその内面が雑にしか描かれない。
エマ、鼻にかけたところがあって他人に対してきついとこあるしいろいろ一方的なところや他の人にも見られる狭量さはあるけど、それでもなんだかんだ良くも悪くも素直で身内への愛情は優しいし、品もあって馬鹿ではないので、読んでてずっと別に嫌いに思ったりはしないんですが(というか、全体的な評価としては現実に居そうな女の一タイプでもあるし、それからさらにいろいろ加味できるからナイトリーさんも彼女を良く思っているのだろうし)。そういう原作の魅力が引き剥がされて、ほぼほぼただのかわいい女になっている感。なんなら愚かさマシマシで性格も悪くなっているところがあるというか、性格の悪いところは拾われているというか。これでナイトリーどのとくっつけられるのか?と冒頭から思わされる。偏ったものの見方をして純朴なかわいいだけの(と言うと言い過ぎか)女って、果てしなく好感を持てる男としてあった理知的な彼が付き合いの長さという面はあっても彼女を選ぶだろうかというか。これならもっと距離を置いた付き合いをするか永遠に妹ポジションでいるかなような。
エマと彼の関係って恋人というよりも気心がしれたきょうだい的な感じで男のほうがあまりにリードしているようなそういういかにも圧倒的上位みたいなものでもあるのだけど、なんかここも原作との印象の違いが。そのへんは時代柄とかの考慮ポイントもあるので置いておく。
そしてどのキャラクターもそういう調子で個々人の良さも悪さも薄味にされているばかりであってたり、魅力を欠くようなものとして描かれていたり、人々の交流の中で生まれる内面、外面による人間ドラマ、すれ違いなどの摩擦、身勝手さ、想いが昇華される場面も表面的になっている。ナイトリーの冷静さすらひたすら嫌味に映るところがすごい(いいように言えばエマの気持ちを追体験できるのかもしれないが)。エルトンさんなんかも世俗的なところもあれば人もよく、残酷なところもあるのではあるけど、本作ではコミカルにされがちというか。なんか、なんだこれ。

本来日本語訳にして上下巻になるような長編なので忠実に映画化するのがまず無理なのだけど、下地に置くなら置くで一個の作品としてはどこかに軸を置いて深みのある作品にして欲しい。
本作はエマのあらすじを雑に拾った見た目のいいロマンス映画であるし、それ以上ではない。ただ雑に映像にしたものでしかない。そのくせ原作読んでる前提でもあるような気もする(先述のように読まなくても観れはするが)。
せいか

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