安藤エヌ

追憶と、踊りながらの安藤エヌのレビュー・感想・評価

追憶と、踊りながら(2014年製作の映画)
4.0
2作目の『MONSOON』を観て好きだなと思ったホン・カウ監督のデビュー作。ずっと観たかったけれど配信はなく、近所のTSUTAYAにもレンタルがなかったので中古DVDを買って鑑賞。

私が好きな「complicated」な人たちの話だった。
カイというひとりの青年が共通言語(人物)である、母親のジュンと彼の恋人だったリチャード。互いに話す言語は異なり、通訳を通して会話をする。

登場人物たちの会話のままならなさから感じる、通じあうこと、分かり合うことの難しさ。他者、他国文化と自国のギャップに苦しむ姿は2作目にも通じる監督独自のテーマだと思った。

なんといってもリチャード役のベン・ウィショーが凄い。愛していた彼への思いを封じ込めて確執のある母親と向き合おうとする姿には胸が締めつけられた。「愛」の演技をさせると本当にベン・ウィショーは無敵になる。

たゆたうように文学的で、人のあり方、愛のあり方に誠実な大変好ましい作品だった。
安藤エヌ

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