ノムラ

ラ・ラ・ランドのノムラのレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
5.0
ジャズ演奏家と女優が夢を追いかける話。恋愛映画だと思ってみると大火傷する。人生のターニングポイントで自分の背中を押してくれる運命の一期一会を描いた作品だからだ。名作映画のオマージュがかなり散りばめられているそうなので、映画通ならポプテピピック的な楽しみ方ができそうである。
日本でのキャッチコピー『夢を見ていた』を考えた人を褒め称えたい。夢を推奨してきたミュージカルに対して、なんと冷めていて挑戦的なコピーなんだろうか。だがララランドを表す言葉でこれ以上に相応しいキャッチコピーはない。ストーリーが進むにつれ、彼らは夢への切符をそれぞれ手にし出す。なんだ、ララランドはやはりミュージカル映画なのだ。夢を肯定してくれている。じゃあなんの「夢を見ていた」のか。夢を追い続ける事と、背中を押してくれた人と一緒に歩む事を両立するのはとても難しい。人生の分かれ道を進むならいずれ離れなければならない。二人で夢を追い続けた描写を散々見せておいて、二人を離し、そして二人の「もしもあの時に夢を諦めていたら」という世界を「ミュージカル」で見せてくる。そう、ララランドは夢もifさえも肯定してくれる人生讃歌の映画なのだ。
パラサイトもそうだが、極めて数学的に作られた映画だと思う。俳優の表情から始まり、台詞、ピアノのカットイン、光源、カラー、衣装、カメラワーク、セット、背景、そして映画のオマージュの数々。贅沢にも主人公二人の心情を語る為だけに、すべてが緻密に計算され対照的な場面が浮き上がるよう映し出されている。
初めて一人で映画館に行って観た映画なのだが、最初の5分だけでもお金を払う価値があったと当時感極まってしまった。最後の微笑むシーンは何回見ても泣いてしまう。人生で好きな映画の5本に必ず入る作品だ。観客の溢れる映画館でぜひ観てほしい。
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