ノムラ

シン・エヴァンゲリオン劇場版のノムラのレビュー・感想・評価

4.8
エヴァの完結編。アニメ版・貞本漫画版・前作の全映画、時間がなければyoutubeに上がっている公式ダイジェストを視聴してから観た方がいい。
考察アニメじゃなくなったエヴァである。めちゃくちゃ驚いた。今までのエヴァはこちらが探りにいくものだったのに対し、本作は観ただけで分かってしまう。この分かる感覚を得る為に、上で挙げた作品群を通る必要がある。
エヴァシリーズはものすごく大まかに分けると旧と新に分かれる。旧では「自分の世界に他人がいてもいい」というテーマで描かれていたのだが、新ではその一歩先がテーマになっている。自分の世界に他人がいることで、勿論傷つくこともあれば癒されることもある。そして愛してくれた人とはいずれ別れなければならない。本作はシリーズで繰り返し言及される「人生は辛い事と嬉しい事の繰り返し」特に別離を受け入れ、自分から手を差し出す話でもある。そんな哲学的なテーマもあるが、正直戦闘シーンや庵野節でテンション上がるので細かいところが分からずとも最高の映画に代わりはない。
もう全部のシーン好きだが、特にレイが言葉を教わる場面、ミサトさんとシンジくんが話す場面、中盤の作戦開始、改札のシーンが好きだ。
宇多田ヒカルの主題歌『One Last Kiss』の余韻もすごい。というよりも、圧倒的な宇多田パワーに均衡している本作のクオリティがすごい。
ちなみに観た後はだんだんと「もうエヴァ観れないんだ」と寂しい気持ちになる。庵野監督をはじめとした90年代の監督達はみな、最高のアニメを提供してくれるが最後には「アニメなんか観るのをやめて外に出ろ」と言った激励を残していく。ここ数年でアニメを見ている人は珍しくなくなったが、ちょっと前までアニメを見ている人というのは、個人的に色んな弱さを抱えた人が多かったように思う。そして部屋で1人アニメに逃避する人たちが現実で生き抜く為に、外の世界へと私たちの背中を押す為に今も変わらず彼らは作品を作ってくれている。アニメを作ってるくせになんて理不尽なんだ、と毎度思うが、私はその愛のメッセージを受け取るたび、作品がたまらなく愛おしくなる。
ごたごた長く書いたが、温かい気持ちになれる良い映画だ。この作品を悪く言う人はあまりいないと思う。
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