カメダリョウ

帰ってきたヒトラーのカメダリョウのレビュー・感想・評価

帰ってきたヒトラー(2015年製作の映画)
5.0
おもしろい。
ただ、おもしろさには種類がある。本作の予告を見て、コメディ映画だと思うと騙される。
コメディとして笑えるような作品ではない。
いや、正直に言うと一箇所あった。「ヒトラー 〜最期の12日間〜」のパロディーシーンがあって、そこは笑った。

本作のおもしろさは、風刺としてのおもしろさ。
風刺という芸風が絶えて久しい本邦では、ちょっとお目にかかれないようなスタイルの作品だ。
ヒトラーがネオナチの若者に襲われるシーンがある。そのおもしろさをどう説明したら良いだろう。日本であれば「天皇は反日」という台詞に出会って、思わず笑ってしまうタイプの諸君には理解してもらえると思う。

2013年の「ヨーロッパにおける偏見調査(How Europeans stereotype one another, in one chart)」というものがある。
ヨーロッパ各国(ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペイン、ギリシャ、ポーランド、チェコ)がそれぞれをどう思っているかというアンケート調査だ。
結果、(ドイツを含めギリシャを除いた)7カ国が、「最も信頼できる国」としてドイツを挙げた。

本作のような風刺劇を作り上げることができるということは、その調査結果と無縁ではないだろう。
「俺スゲー」でも「自虐」でもなく、風刺。
(ドイツ映画一般に言えることだが)もうちょっと洗練されて欲しいとは思いつつ、すごい作品だと思った。