何でもミュージカルにしてしまう職人・井上梅次監督。本当に、心底こういうの撮りたかったんだろうなあ。本来はコニカラーの総天然色作品だし。気持ちはわかる。
でも、個人的には本家MGMの『巴里のアメリカ人』(1951年)がつまらなかったように、今作も薄っぺらいストーリー(愛らしいといえば愛らしい)と長々としたレビューシーンの連続(好きな人は好きなのだろうけど)で、相当我慢が必要だった。
なので、日本娯楽映画黄金期の名だたるスターたちが(とは言っても、五社協定があるので“日活に出られる人”限定ではあるのだが)、珍妙な歌や踊りを順番に披露するという、オールスターかくし芸大会のドラマパートみたいな内容になってしまった。
そういう意地悪な視点で見ると、なかなかに笑える珍品ではある。
眼鏡をかけた三女の浅丘ルリ子がチャーミングで、そこは見る価値あり。