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「いまだ失われざる楽園」、あるいは「ウーナ三歳の年」のnoelleのレビュー・感想・評価

5.0
粟津邸のジョナス・メカス展にて。粟津潔デザインの特大リトアニアへの旅の追憶ポスターを背にしたスクリーンに、16mmフィルムでメカスの映像が重なる。メカスの生きた時代の空気が閉じ込められた建物に映写機の音が響く最高な環境での上映会。とても贅沢な時間だった。

久々のメカスのテンポに身を委ね序盤から涙腺が緩む。メカス家族の日々の断片を集めた、娘のウーナに捧ぐ6部構成。逃れついた先にあった日常という名の楽園のビジョン。些細な瞬間に多幸感が充ち満ちていた。雪のニューヨーク。ダンスするウーナ、木の枝を引き摺るウーナ、ロバをびびりながら見に行くウーナ。そしてやっぱり最高にかわいい無表情のメカスママ(今回もじゃがいも、皮剥きは包丁で)。ひたすら幸せそうなメカスの自撮りもいつになく多い。
眼差しで映画は成立するということを私はメカスから教えてもらったのだったと思い出した。身体使って日々を目一杯生きることが抵抗なのだと、メカスの映像を見ると思う。そしていつも見たあとはカメラを握りたくなる。Be idealistic、いい言葉だ。
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