幌舞さば緒

ドラゴン・タトゥーの女の幌舞さば緒のネタバレレビュー・内容・結末

ドラゴン・タトゥーの女(2011年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

一発目のモザイク付きの絡みで「ははーん、不倫してる設定でダニエル・クレイグだったし、脚本が向かう方向はそっちなのか?にしてもリスベット、銃撃を受けた者に対して体を使って癒すなんて…いい女だ」なんて思ったり、チラチラと数回「これ本当にミステリーのノリだけで進むのか?笑」と思ったり、「ニルスよりやべー変態出てきた!貴様だったか!ハラハラしてきたぜ!」てな感じでミステリーを堪能していたのだけれど、バスローブ姿のミカエルがリスベットの着てるTシャツに手を突っ込んだその瞬間、なぜダニエル・クレイグが主人公にキャスティングされてるのかを理解したような気になってしまい、笑う。ドラゴンタトゥーの女が色気のある〝ちょいワルイケオジ〟と出会い…みたいな話でもあり、完成されたミステリーの脚本に〝こうやってこうした方がおもしろい!笑〟みたいな感じで落書きを加えたような仕上がりが凄くイケてる。この映画を、男性の行動や思考や好みのモノをディスることに長けてる女性と観たらめちゃめちゃ面白いことになりそう。ちゃんと鑑賞した女性は、魂が若ければ若いほどミカエルに対して少しだけキレ気味になりツッコミを入れたくなる映画な気がする。それをも想定してニヤけてるデヴィッド・フィンチャー監督が脳裏をよぎる。前半からリスベットはチート級の強さを何気に見せつけていたけど、後半そのチートレベルが限界突破していく感じ…まるでピッチャーの手から離れた90kmのボールがバッターの手前で突然150kmになるような、畳み掛けていく構成に対して、そんなのありかよ!的なノリで笑ってしまう。また、ラストのリスベットのエモい演出が007慰めの報酬でのラストのボンド(演ダニエル・クレイグ)と重なったり…とにかく自分好みのギャグセンス。最高。


台詞メモ

「今日までブルムクヴィストは〝正義の記者〟でした。裏付けもなく人を犯罪者呼ばわりした。名誉毀損で信用失堕です」

「実業家ヴェンネルストレム氏に関する記事で同氏がポーランドに対する補助金を、クロアチアの右翼組織との武器密売に流用と報じました」

「ブルムクヴィスト記者は優秀だ。悪意はないだろう。だが記者はデタラメだ。誤りは正さねば。記者たちは肝に銘じてほしい。記事には責任が伴う」

「私にも責任が」「なぜ君に?」「記事を掲載」「僕が悪い」「また信用が」「地に堕ちたよ。もう疲れた。家に帰って1週間寝込むよ」「夫に〝今夜は外泊〟と電話する」

「いつ現れるやら」「彼女と話したんだろ?」「気まぐれですので。社員に好かれてません。だからフリーで働けと」「会いたいと伝えたか?」「依頼人と会わないのが原則です」「腕はいいか?」「とても。うちで最も優秀な調査員です」「問題は?」「あなたは気に入らないかと。普通と違う」「どんな点が?」「すべてが」

「報告書に問題が?」「完璧だよ。省いたことがあれば知りたい。ありません。君は彼をどう思う?」「項目外です」「意見がないのか?」「彼はクリーン」「清潔という意味か?」「彼の仕事においては清潔さが資産」「有罪判決で資産も底をつく」「もし事実なら彼は愚かです」「ハメられたと言うのかね?」「それも項目外です」「君の言うとおり彼は愚かなマネをした。経済的損失はどれくらいだ?」「賠償金で貯金はゼロに。行っても?」「待て。彼の私生活について詳しい記述がない。意図的に省いたのかね?」「関係ないので」「イエスか?ノーか?」「彼女としては調査対象であれプライバシーを守る権利があると」「私は彼のすべてを知りたい。問題と思われる点があるかもしれん」「共同発行者のエリカと長年肉体関係が。彼の結婚は破綻。×××する。もっとやるべきね」

「パパ」「ベニラ、心配しなくていい」「ママが…」「僕の心配を?」「お金の心配」

「誰かが彼女を殺したのだ」「あの日、島にいた誰かが。毎年、私の誕生日に彼女が何を送るか知っている者が。それらは彼女から。残りは彼女を殺した者からだ」「これを知るのは?」「私と警察と犯人、そして君だ」

「警察の捜索が行き詰まった後も私は調査を続けた。あの1日のために人生の半分を費やした」「お気持ちは察しますがご依頼の件は金のムダかと」「金の話は何も」「必要ないです。今さら何も見つけられませんよ」「それは分からん。君の調査能力は優秀だ。しばらくこの島に滞在してくれ。水辺のコテージを使ってほしい。捜査資料を検討し、見逃した点を洗い出すのだ」「ですが私の生活や仕事が」「有意義な休暇と思え。君が避けたい人々を避けることができる。調査に必要な期間中、給料は2倍払おう。謎が解けれは4倍」「でも…」「まだ途中だ。もう1つ提供する。交渉がヘタだな。君が何よりも欲しがる金では買えぬもの。それをやる。ハンス=エリック・ヴェンネルストレムだ。彼は昔、私の部下だった。興味深いので観察し続けてきた。君の記事は正しい。証明できなかっただけだ」

「もう誰が誰だか」「知らん方が幸せだな。残念ながらじきに我々を知りすぎてしまう」「そしてあれが長兄の孫マルティンの家、ハリエットの兄だ」「誰と話す?」「私だよ。彼はグループの会長だ。(銃声)誰か夕食を仕留めたな。グンナルだろう」「管理人か」

「遺体が出なかったのは驚かない。島全部は掘り起こせない。動機も不明だよ。事故か?計画的犯行か?彼女は秘密を握っていた?事業のこと?」「事業?16歳の少女が?」「非常に聡明な子でヘンリックは彼女を後継者にしたいと話してた」「あの日、友人とパレードに」「気分が悪いと告げ先に帰った」「友人にも秘密を抱えていたようだ。十代の少女はとても複雑だよ」「僕にも娘が」「では分かるな」

「この名前と数字は何の意味です?」「地元の電話番号だ。最初の女性、マグダはハリエットなど知らない。4番目のR•Lは老齢の女性でハリエット失踪の何年も前に死亡。残りの3人はまったく分からない」「思い出させてすみません」「忘れられない。私の〝レベッカ事件〟だ」「何のことです?」「どんな警官も未解決事件を抱えている。警官仲間のトーステンソンは毎年レベッカ事件に立ち返り資料を何度も読み直していた。皆彼を笑ったがね」「それも少女失踪?」「いや、私が言いたいのは警官の心情の話だよ。トーステンソンは生涯その事件を諦めなかった」

「かつて精神病院に収容されており、凶暴行為を繰り返した。里親を4回替えたが失敗。飲酒による逮捕2回、薬物2回、ガラス瓶で男の顔を殴り暴行で逮捕。わりに最近のことだ。パルムグレンには治ったと騙したのか。だが、この記録と私を見るその目つきを考慮しても君は治っていない。今までのやり方は終わり。今後は毎月小遣いを渡す。支出は全額報告しろ。不明な額は麻薬に消えたと見なす」「10歳から自立してる」「国に養われてきたのだ。ちゃんと聞け。君の行動は報告書にあるとおりだ。より厳しい措置をとっても誰も驚かないだろう。また精神科病院に収容されたいか?」

「あの後、すべてが変わった。一族も会社も」「なぜ?」「同族経営の企業としては我々はまだ国内最大だ。最盛期は従業員4万人。今は半分。私の妹ハリエットの死後、衰退が始まった」

「あの一族はまともじゃない」「合併とは違う」「まるで同じことだ」「じゃ断るわ。50%の可能性を捨ててゼロを選ぶのね。…ミカエル、私は明日の朝戻るのよ。ベッドに来ないの?」

「ハリエットのことね」「若いのに知ってる?」「親が子供に教えるの。〝よそ者に用心しろ〟と」

「彼女に関する記録が一切見つからない」「なぜ知りたいんです?」「話がしたい」「言えない」「なぜ?」「守秘義務に反する」「分かりました。ある名前を教えます。僕の妹で弁護士です。連絡させます。調査方法に問題がある」「被後見人なので彼女の記録は封印されています」「何の関係が?」「苛酷な人生でした。これ以上、彼女を苦しめないで下さい」

「突然で怖がらせたかな」「触ったら後悔すらよ」「武器は無用だ。君の報告書は詳細すぎて面白くない」「当然ね」「僕は読者が面白く読めるように書く」「ヴェンネルストレムの件も?」「君のボス、アルマンスキーの話では君は興味のある仕事しかしないそうだね。僕に興味があった?座れよ。彼が君に頼む仕事は〝微妙〟なものだけだそうだな。彼は〝微妙〟と言ったが、つまり〝違法〟だ。君はPCをハッキングした。通報すべきだがやめておこう。代わりに話を聞かせる。もし興味があればリサーチを手伝ってくれ。イヤなら皿を洗って消えるよ。食べろ」「何のリサーチ?」「リスベット、そう呼んでも?」

「性生活はどう?今月の報告書は最悪だ。まるで心がこもってない。来月はいいとこを書くんだよ。喋るな。頷くだけでいい。もう異常はないと証言する精神科医を探せ。タトゥー除去サイトは見るな。この次はここ(額)に彫る」

「異常だよ…異常だ。猛烈に痛いよクソ…イカれてるよ。ここの連中。誰かが僕を撃った。事故じゃない」「今は安全よ」「…いい考えじゃない」「なぜ?」「僕は年だし仕事仲間だ」「編集長とも寝てるでしょ」「僕なりの規範がある」「黙ってて」

「射撃で難しいのはかすめて撃つことだ。実にうまくいった」「失敗だ。僕はここにいる」「狙いどおりだよ。君はここに来た」

「処理した後は沖合に捨てる。父とは違う。父は方々に死体を残した。利口とは言えない。不愉快な男だ。当然の末路だよ。父は手際も悪かったし酒に溺れていた。殺しには規律が必要だ。細部に注意を払わねば。計画、実行、後始末。承知だろうがここは君の処理で修羅場と化す。君に聞きたい。なぜ人は本能を信じない?様子が変だったり人の気配を感じたりする。君も〝何か〟を感じたのに中に入ってきた。私は無理じいなどしなかった。〝酒でも飲もう〟と誘っただけだ。痛みへの恐れより相手の気を損ねたくないのだ。不思議だよ。皆、自分から来る。そして君のようにもう助からないと知りつつ、それでもまだチャンスを信じる。〝何か言えば助かる〟〝礼儀正しくすれば…〟〝泣いて懇願すれば…〟だが彼女たちの顔からやがて希望が消える。それを見ると勃起する。君も私も共に性的衝動がある。私の欲求を満たすには多くのタオルが必要だ」

「ここに男は初めてだ。男に触れるのも初めてだ。父以外は。あれは義務だった…妹と私の」

「なぜ23歳なのに後見人がつく?」「精神的障がいで生活を管理できないから」「いつからそう言われてた?」「12歳の時から」「12歳の時何が?」「すまない、僕には関係ないことだ」「父を殺そうとした。火を放ったの。全身の80%を焼いた」

「彼女、まだゲームを?電話は?」「誰にも」「携帯電話は?ハリエットに連絡するかと…」「もっと触ってて」

「彼は横領で解雇された」「あまりに昔の話だ。今さらヴェンネルストレムを訴えられない」「出訴期限法か。まさかヘンリックの〝奥の手〟がこれとは。君を騙そうとしたのではない」「35年も前の件で告訴できないのはヘンリックも承知だろ」「彼は評判を重んじる人だ。世論の裁きで奴を葬ろうとした」「今や世論は悪党どもに喝采を送る」「彼は年だ」「ヴェンネルストレムの首を約束した。話が違う。これでは闘えない」

「ヴェンネルストレムはなぜ勝訴したの?」「僕がバカだった。匿名の情報を信じたが、連中が仕掛けた罠だった。情報はウソ、奴は法廷で反論した。私はあなたを非合法な方法で調べた。奴についても同じ」「つまり?」「興味があって調べたの。でもハリエットの件で多忙で整理してないけど。たぶん発見が」「新しい発見か?」「まあね」

「武器、麻薬、ロシアこ犯罪組織の金を洗浄。彼の莫大な裏資産だ。すべてケイマン諸島の口座に」「なぜ分かったの?」「聞くなよ」「知りたいわ」「彼のPCを見た。会計士と弁護士のPCも」「どうやって?」「内部協力者がいる」「そうなの?」「表向きは」「本当は?」「どうしても知りたいか?」「どうやってアクセスしたの?」

「反撃開始だ」「奴はどうなる?」「今回は言い逃れできない。警察や金融規制庁が動き刑務所送りかも」「本当に?」「ムリかな。悪党は逃げ切る」

「どうした?」「言いにくい」「言えよ」「お金を貸して。5万クローネ。投資の話が。安全な投資よ」「5万クローネも金はない」「あるわ。2つの口座に6万5000ほど。知っててごめん。必ず返済する」

「ケイマン諸島の複数の口座から送金し債券に変換を」「銀行コードは?」「分かります」「口座の数は?」「30よ」「少々時間が」「手数料は4%ね」「はい」

「お金返す」「もう?ありがとう」「私こそ」「(煙草)やめたんだ。投資は成功?」「まあまあね。今夜予定は?」「娘に会う」「そう」「きれいだ」「またクリスマスね。じゃあまた」
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