このレビューはネタバレを含みます
物言わぬ殺人鬼、翻るナイフ、古いカメラ、黒光りする髑髏のマスク。
現代的でスタイリッシュ寄りの殺人鬼は私にとって、トレードマークの仮面よりも残虐さよりも、怪力と自己治癒能力(自分で傷の手当てをする描写がある)でアイコニックな個性を放った。
日本に来るまでにかなり時間の空いていた残虐映画。
ストーリーと言えるようなストーリーは存在せず、殺人鬼に追われる記憶喪失の女性と、そこに巻き込まれていく人々が犠牲になっていくシンプルなスラッシャー。
劇映画としての魅力や濃さはほぼ無いのかも知れないが、スラッシャーホラーとして重要な要素を煮詰めているので、このジャンルが好きなればこその見所はたくさんある(逆に、この手のジャンルや要素が好きでない人の評価なら★2つ以上低くても何も不思議に思わない)。
“特殊メイク畑の名手×命を奪う事の先に目的のある猟奇殺人鬼”
作品(最近だと『テリファー』とかもそう)は、やはり特殊メイク好きのツボを超的確に突いてくる。
二度見・三度見のカメラワークに耐えうる肉体の断面の造形や角度、ゴア行動や流血の誇張や緩急に、「映え」のあるスラッシャー技術美が結集されていると言おうか。
オープニングから出し惜しみの無いテンポで勢いがあり、何故か挟まる“普通に良いシーン”や、ホラー映画の女性主人公にしてはハスキーで個性的な悲鳴の俳優さん等諸々の特徴も独特で、個人的には好き。
最大の見せ場であろう、恐ろしく生々しい描写で死と肉体破壊を見せつける残虐シーンが無声である、という所も最高にcool……!
パワーある特殊メイクを見せられる映画だからこそのクライマックスに感服した。