イチロヲ

日本人のへそのイチロヲのレビュー・感想・評価

日本人のへそ(1976年製作の映画)
4.0
最先端の治療法を会得した医師が、吃音症に悩まされている患者たちに、芝居の入れ子構造を利用した矯正演劇を実践させる。1969年に上演された井上ひさしの戯曲を映像化している、ATG謹製のヒューマン・コメディ。

東北から上京してきた娘(緑魔子)の人生経験を主軸にしながら、吃音患者たちの演劇を劇映画へとコンバートさせている作品。三十路の緑魔子が10代後半の少女を熱演しており、浮き沈みの人生模様をコメディエンヌ的な芝居で披露してくれる。

前半部は、いわゆる底辺職と称される仕事を転々としながら、運命共同体となる仲間たちの人間讃歌を説いていく展開。ストリッパーの立場まで堕ちてしまうのだが、本当に「堕ちた」といえるのだろうか、というテーマ性が見えてくる。

後半部に入ると、医師殺害の犯人捜しへとドラマが転調。社会の歯車となっている各派閥の人間が一同に介するため、犯人捜しという行為が風刺を浮き彫りにしていく。後出しジャンケン的な展開に辟易させられるが、俳優諸氏のアンサンブルは極めて良好。
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