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苦い銭のnoelleのレビュー・感想・評価

苦い銭(2016年製作の映画)
5.0
新作『青春』に繋がる部分もあると聞いて鑑賞。(追記:『青春』のスピンオフとのことだった)ワンビンの作品は生の人間を見れるから好きだ。先日読んだ中平卓馬の本にあった都市から見た地方の話も途中思い出したけど、映画を見ているとスクリーンの外から一方的に映る人々を眺めることへの罪悪感というか、暴力性を感じてしまうことが多々ある。自分には寝床も一応の安定した生活もあって、家に帰ればそれらに包まれ中国の一端の映像、それが例え熱が伝わるくらいとても親密なものであってもすぐに忘れてしまうことへの罪悪感。そんなことも映っている本人たちからしたらきっと全く余計なお世話なんだろうけど、そういう感情や一方的な視線、スクリーンすらも取っ払って、ただその場に一緒にいることを許してくれる空気がワンビンの映画にはやっぱりある。

冒頭の離婚寸前のカップル、19歳のミシン工の女の子たち、辞めるとわかって次の職場へ向かって行った男の人…実際に会って話したくなった。中国の農村部から都市の個人経営の衣料品店へ出稼ぎに行く人は30万を超えるとのこと。自分基準で言えばとても良いとはいえないその労働環境で働き寝て起きて、それでも浮かべる表情や会話は自分の日常で出会うそれと大して変わらず馴染みのあるようなもの。人間みんな同じなんだという当たり前の事実を、言葉よりずっとダイレクトにワンビンのカメラは伝えてくれる。
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