T太郎

アニー・イン・ザ・ターミナルのT太郎のレビュー・感想・評価

3.5
901
不思議で変わった映画だ。
最初は分かりにくい。
時系列が分かりにくい。

だが、そこは我慢して観てみよう。
徐々に理解できるはずだ。
登場人物はわずか5、6、7、8、9人だけなのだ。
(5人やで)

主人公はアニー。
駅構内で24時間営業している喫茶店のウェイトレスだ。

他はビルという国語教師。
ヴィンスとアルフレッドの殺し屋の二人組。
駅の清掃員。

これらの面々が繰り広げる諸々を俯瞰で眺めるフランクリンという人物もいる。

イカレた世界という事が前提のような作りだ。
時代も場所も定かでないネオンサインが煌びやかな(多分)架空の町が舞台である。

アニーは国語教師のビルと二人組の殺し屋の双方に関わりを持っていく。

だが、その関わり具合が非常にエキセントリックで変わっているのだ。
なんか知らんけど無敵感を醸し出しているのである。

彼女は一体何者なのか?
まあ、そんな物語だ。

面白かった。
退屈する事はなかった。

だが、若干の不満はある。
全般的にエキセントリックでぶっ飛んだ世界観ながら、アニーの動機だけがやけに現実的で湿っぽいのだ。

そこは単にフランクリンに取って代わろうという野心で良かったのではないか。
この作品のカラーからすれば。

まあ、不満とも言えない不満である。
面白かった事は間違いない。

アニー役はマーゴット・ロビーだ。
神出鬼没の謎の美女を華麗に演じている。
主人公なのに謎の美女なのである。
一体どういう事なのか。
是非とも、その目でご確認いただきたい。

私は喫茶店が大好きだ。
アニーが働いているような駅中の喫茶店にもよく行く。
そう、“喫茶店”である。

ある日、私は行きつけの喫茶店でお紅茶をいただきながら読書に勤しんでいた。
実に優雅である。

しばらくして、小洒落た若い女性が私のはす向かいに座るやいなや、携帯で友人と話し始めたのだ。
その内容に私は驚愕した。

「今、京橋って駅に着いたところなの~。
○○っていうコーヒーショップにいるから~・・・・」

こ、こ、コーヒーショップ?

京橋(大阪)の庶民的な喫茶店がコーヒーショップ・・・だと?

私は度肝を抜かれたのである。
そんな単語を生音声で聞いた事がなかったからだ。

コーヒーショップときたか・・・

喫茶店の方が文字数が少ないのに、なぜわざわざコーヒーショップと言ったのだろう。
東京ではそれが一般的なのだろうか。
(東京の人かどうかは知らん)

私はそっと本を閉じ、店を後にしたのであった。

           完
T太郎

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