鴉

トップガン マーヴェリックの鴉のレビュー・感想・評価

4.8
最高でした。マーベリックの物語としても、戦闘機のアクション映画としても最高です。映画館で観た映画で、こんなにも気持ちが高ぶったのは何年ぶりだろうというぐらい、上映中は常に引き込まれていました。後々考えてみれば、ちょっと無理やりなシーンもありましたが、それもエンタメとして消化できてしまうし、自分は好きです。

マーベリックは凄腕のパイロットでありつつも、パイロットとしての印象が強いので、教官としての彼をどういう風に描くのかは、気になっていましたが、気さくな部分を見せつつも、訓練中は威厳がしっかりあり、そして前作があるからこそ、彼の言葉にもしっかり説得力がありました。教官や先生のキャラクターは、本人の威厳や言葉の説得力の有無が、とても重要なキャラクターですが、本作のマーベリックは、ただの凄腕のパイロットというだけではなく、しっかり教官としての姿もしっかりありました。

実際にマーベリックと訓練兵たちがドッグファイトをしたり、マーベリック自らが実践しているシーンを映す事で、実際に彼の凄さを目の当たりに出来ます。
パイロットや教官としての魅力だけではなく、前作でグースを失っている事からの、ルースターとの複雑な関係性に悩んだり、無理難題なミッションを彼らに達成させられるのか弱音を見せたりと、強い部分だけでなく、弱い部分も描いていて、マーベリックの人間としての奥深さを感じられました。

マーベリックに教授してもらうパイロットたちも、若々しさがありつつも、最初は、協調性に欠けていたり、自分本位で相手への尊重が少し欠けていたりと、若さの一長一短な部分を描いていました。

マーベリックとルースターの関係性の複雑さが、この映画の重要な要素の1つでもありますが、マーベリックが色々と気を遣って本音を隠していて、ルースターがそんなマーベリックに詰め寄ったり、浜辺でアメフトをする時もあまり仲は良くなさそうだったりと、お互いの境遇が分かるからこそ、マーベリックが思い悩んだりするのも、難しいよなぁと共感出来ました。マイルズテラーの演技も、彼に対して上官への礼儀はありつつも、父親を亡くした事からの、険しさも同時に伝えていて、その塩梅が凄くよかったです。

ハングマンは、前作でいうグースのポジションだと思うのですが、自信家で協調性を重んじないけど、その分実力もあるっていう、ルースターのライバル的なポジションのキャラクターです。彼がチームの輪から外れている感じはありつつも、最後の方でしっかり見せ場はあってホッとしましたw若干ステレオタイプな雰囲気はありましたが、これぐらいの分かりやすさも、この映画のスパイスになっているのかもしれません。

カメラワークは本当にすごいです。トムはMIシリーズでも、CGではなく本物を使う事で、お客さんにリアルな体験を提供できると言っていましたが、この映画は正にそれが本当だなと痛感させられました。特にコックピットの中からパイロットを映したアングルは、彼らの表情の歪み具合と、周りの景色のスピード感で、没入感が凄まじかったです。かっこよさというよりも、こんなにスピード出してるけど、大丈夫なのかな?という不安も感じてしまうぐらいで、このリアルさは、本当にすごいです。機体が180度、360度回転回転すると、観ているこっちも酔いそうになったりして、その臨場感が凄いです。あれはCGではなく、実際に機体から映る風景の質感や光の当たり具合だからこそ表現出来たんだと思います。

プロデューサーにクリストファーマッカリーや、トムがいるのもあってか、盛り上げ方がMIシリーズっぽいなとも思いました。無理難題をギリギリで何とか遂行するスリリングさが、まさにそれだなとw

サウンドもとても良かったです。第一印象でまず感じたのは音楽でした。音楽の厚みがしっかりとあって、曲の当て方も、その場面のテンション感や緊張感にしっかりとフィットしていて、スピード感と盛り上げ方がとても良かったです。ハンスジマーが音楽を担当しているのもあって、ストリンググの厚みがシーンを際立たせていました。ハンスジマーのサウンドは映画音楽の中でも特に印象的ですが、それを活かす為に、場面の中でも音楽を全面に出すシーンと、しっかり後ろに下げるシーン、効果音だけで場面に緊張感を持たせる等、選曲とボリュームカーブが素晴らしかったです。

効果音も素晴らしかったです。(以下SE)特に戦闘機のSEは自分も期待していましたが、特にコックピット内のSEが印象的でした。パイロットが機体を傾けた時の空気抵抗の音が左右から聴こえてきて、旋回した時も、音がパンニングして臨場感が凄まじかったです。戦闘中も激しくSEは鳴っていますが、全体的にごちゃごちゃしている感じは全くなく、各カットで聴かせる音を明確にピックアップしていて、全体の印象はとてもスッキリしています。
空気抵抗の音やWhoosh系は、帯域のぶつかりや音の差別化が難しいですが、この映画では、この音が鳴っているなというのがはっきりと分かりました。ただでさせカメラワークが激しいのに、そこにSEが加わる事で、没入感はこれ以上ないほどのものになっています。映画館での映画体験を重んじているのがとても理解できます。

長々と書きましたが、本当に上映中はアクションのかっこよさと、緊張感、そして喪失感など様々な感情が高ぶりました。映画館の映画でこんなに高ぶったのは何年ぶりだろう...
トム・クルーズの観客を楽しませる映画作りをしっかり体現している映画だなと感じました。観れてよかった!
鴉