あつお

億男のあつおのネタバレレビュー・内容・結末

億男(2018年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

「お金」の本質を考える作品。
重さ1g、原価約20円の紙。それに人々は1万円もの価値を見出している。ある意味宗教と言えるだろう。その紙を得るために人生をかける人、人生を振り回される人、全く無関心な人。様々な人がいるだろうが、物々交換の代理手段として確立したそのシステムに踊らされている人がいるのは事実。お金とは何なのか、人生における幸福とは何なのか。考えさせられる作品である。
一般的には収入が増えるほど、幸福度は増すと考えられている。しかし、研究によれば、幸福度は年収約700~800万円で頭打ちに。それ以上稼いでも幸福度が増すわけではない。お金を持つ人独特の苦しみがあるのだろうか。お金を持っても使いみちが分からないのだろうか。はたまた、真の幸福は苦しみから開放されようと努力している過程にのみ存在するのだろうか。
主人公一夫は3000万円の借金に苦しみ、お金があれば全てから開放されると信じていた。しかし実際は違った。借金を返そうと必死に働くうちに、常にお金の事で頭がいっぱいに。お金への執着が強くなっていたのだ。お金さえあれば幸福になると信じるも、そのお金でどう幸福になるかは考えていなかった。離婚調停中のマサコとの関係もお金で買えると信じていたのだろうか。本当に大切な部分はお金以外にあったのに…
人間は目に見える具体的な指標に飛びつきやすい生き物。人間関係や幸福度などの指標は目に見える形で表せないが、貯金金額などお金としてなら具体的に想像しやすい。しかし多くの研究結果では、人間の幸福度を最も左右するのは充実した人間関係である。
幸せになるにはお金が必要だが、お金だけでは幸福にはなれない。お金との適度な距離を探りたいと思う作品でした。
あつお

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