ろ

ガンジスに還るのろのレビュー・感想・評価

ガンジスに還る(2016年製作の映画)
4.8


「心の中に真実がある。だから心に従うんだ。」


ほんとうに、「東京物語」みたいだなぁ。
シーンとしている場面で、「これ、ぜったい夢やんなぁ」「ヒヤヒヤするわぁ」と後ろからおばちゃんの声が聴こえるのも、小津さんの映画を観ているときとそっくりなんだ。



高齢の父は突然「バラナシに行く!」と宣言した。
辿り着いたのはガンジス河の畔、「解脱の家」。

仕事一筋の息子と頑固な父親。
父の言動をきっかけに、長い年月をかけて、ガンジス河よりも大きな溝が生まれた。
そして、天真爛漫に見える孫娘もまた父親に気を遣い、女性としての自立に一歩踏み出せずにいた。

生死を彷徨う父
家族と仕事の板挟みになる息子
結婚か就職か、悩む孫娘
そんな三人のこころを繋いだものは・・・。


「滞在できるのは15日だけなんでしょう?お父さん、それまでに・・・」
「おまえは親父が早く死ねばいいと思っているんだろう」
「そんなこと言ってないじゃない」
息子と妻の会話に、「東京物語」の杉村春子姉さんの姿が重なります。


「わたし、あなたが死にそうってときに、ちょっと嫉妬してしまったのよ」
18年間 解脱の家で暮らす隣人は、断食をしても死ぬことはできなかったと語る。
「解脱するのに小手先の努力ではだめだって、わかったの」


ガンジス河から見上げる幻想的な夜の祭り。
「お父さんには内緒よ」と顔を見合わせて飲むラッシー。
ガンジス河を前に語られる本音。
「わしはずっとおまえのことを自分のものだと思ってきた。だが、もうお往き。」



「魂は波のようなものだ。それはやがて海になる。母なるガンジスのように」









( ..)φ

鑑賞後、まっさんの「親父の一番長い日」を聴いていると、うっかり泣きそうになってしまいました。
ろ