月うさぎ

バイスの月うさぎのレビュー・感想・評価

バイス(2018年製作の映画)
5.0
すごい濃い映画。演技もシナリオも演出もテーマもすべてにおいて。
米国の猿真似政権に牛耳られている日本国民はみんなこの映画を観たほうがいいです。
こんな極端な政治家は日本には存在しないけれど、同じことがセコイ規模で行われているのがすご~~くよくわかる。
犯罪者を研究して人間心理を解明するという学問手法がありますが、アメリカの政治を知れば日本の政治がわかる、かもしれない。

クリスチャン・ベールがまるで別人です!!!そっくりすぎ!
でも映像操作ではなく実際にお太りになったというじゃないですか!
サム・ロックウェルの演じるブッシュのなさけない表情がまた実に面白い。
もう本物にしか見えません!!

チェイニーさんのことは知っていたけれど、副大統領やってた?な程度の政治知識しかなかった私。
バウエルさんは結構好きだったんだけど、なんか途中でがっかりさせられたのよね。
それが実はこういうことだったのか!!と納得。

イランへの報復戦争の時、カウントダウンの映像を観ていた。
実にゲームのような戦争だった。
それがチェイニー主導の石油利権目的な戦争ビジネスだったとは!
…なんて今となっては驚きませんが。
大量破壊兵器は開戦の口実のでっちあげだったと世界の多くの人は知っているから。
でも当時はアメリカを信じた国が大多数。
情報操作と感情を刺激するデモンストレーションによって。

チェイニーは自らCEOをやっていたハリバートンという石油会社のためにイラクの石油産業をつぶし、戦争で町を破壊しておいて、復興事業をその会社に独占させたのだとか。
安部政権のかけなんとか事件なんて小さい小さいと思いますね。根っこは全く一緒ですが。

しかしなんといっても、チェイニーさん。
家族愛にあふれたお方なんですよ。妻を愛し娘を守る。
だから国民の望んだことだと言って、銃器を認め戦争を仕掛ける。
「アメリカファースト」は何もトランプの発明ではない。
実はチェイニー初め、共和党が尊敬し愛するニクソン大統領のセリフだったのでした!

こんなハードなテーマにも拘わらす、すごく面白い。
笑わせるネタが満載な上に、その表現がブラックでかつ魅力的。
チェイニーの趣味であるルアー・フィッシングにイメージを重ねて、ジョージ・ブッシュ(子)がチェイニーに吊り上げられる様とか、もう、笑わずにいられません。
積み上げられたティーカップや持病の心臓の鼓動
時制があちこちに行き来するめぐるましさも慣れると説明に効果的であることもわかります。

「理念なき政治」「権力に疑いを持たない」そんな姿勢がチェイニー風
彼のご意向によって多くの民間人が戦火に焼かれ絶命し、テロの報復は新たなテロを呼びさまし、今のテロが蔓延している社会を生みだしたというのに
彼は言い放つ「謝る必要はない」と。

「国のため」「家族のため」
そんな言葉がなんとも恐ろしく不気味に聞こえてきませんか?
日本でも最近よく聞かれるし、プーチンだってロシアのためって繰り返してる。

チェイニーが開き直るのも当たり前だよね~。何が起こっているか、その時の国民はな~~んも考えていなかったんだし、
そんなことより、ダンスやテレビドラマに夢中でさ~。

やばい、この映画、もろ民主党のリベラル臭がするぜ!

そこまで織り込み済みの映画でございました。

実に見事なできの映画です。
残念ながら日本では決して作れない映画。
企画の時点で忖度で却下の上、万一出来上がったなら上映館にも拒否されるでしょう。
やっぱ、こういう所はアメリカってすごいなと思ってしまう。
このテーマでビジネスにもなれば、賞も獲るんだよ!
ちゃんと面白いし!
月うさぎ

月うさぎ