ノラネコの呑んで観るシネマ

愛しのアイリーンのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

愛しのアイリーン(2018年製作の映画)
4.7
強烈。
おそらく、日本映画史上最も放送禁止用語を連発した作品。
こりゃ地上波放送不可だな。
コミュニケーションの断絶がもたらす、寓話的な悲喜劇。
安田顕演じる寒村に暮らす中年男が、フィリピンから若い妻を金で買ってくる。
だが、老いた母親は決して彼女を認めようとしない。
タイトルロールのアイリーンは、実はドラマを持っていない。
彼女は幸せになりたくて、他人も幸せにしたいシンプルな人物だからだ。
夫の安田顕は相当鬱屈しているが、彼女と少しづつ心を通わせてゆく。
ところが、母親が要らん策略を巡らせたことで全てが壊れてゆく。
様々な葛藤を抱えた周りの人間たちが、母親の策略に巻き込まれるように二人の結婚に絡んでゆき、遂には安田顕もぶっ壊れる。
日本の田舎の不条理で嫌な部分が全て顕在化する様な物語で、この居心地の悪さはニューシネマ系ホラーで描かれるアメリカ南部に匹敵する。
プライバシーゼロ、子離れ出来ない親に親離れ出来ない子、人種差別に女性蔑視、全てがシンプルなコミュニケーションを阻んでゆく。
元凶たる母親が、言葉を失うのは象徴的。
歪んだ愛に突き動かされる木野花の怪演が怖い。
ああいう人実際にいそう。
ブログ記事:
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