祖母エレンが息を引き取った。娘のアニーは母の死に釈然としないわだかまりを感じつつ、残された家族と一緒に静かにそれを見送った…
この日を境に、不穏という粘膜で覆われた何か得体の知れないものが家族のあとを蠢くようについてくる。次第に情緒不安定になっていくアニー。それとも生まれながらにしてそのような体質だったのか、おぞましい死の本性が露わになっていく異様な家系図は悪夢のように重くて暗い。
静かに魂を吸い取られ、傀儡化された生身の人間がいかにも生きているかのように佇むドールハウス。何も知らずに見れば只々美しいドールハウス…
以下ネタバレ
喉の奥底から漏れ出る不気味なサイン。反転する昼夜に捧げられる異形の屍。賑わい始めるまやかし色の光とそれを見守るこの世の色なきもの。周到に用意された脚本が巧妙なだけに、こんなにも膨張していく恐怖や緊張にカタルシスを求めていると(それでも充分楽しめるけれど)肩透かしに近いものが舞い降りてくる。
親族が犯されるべくして犯され続けてきた病に、自身でも知らないうちに(夢遊として)抗う母親の姿は感動的。