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ナイチンゲールのniwajunのレビュー・感想・評価

ナイチンゲール(2019年製作の映画)
4.5
奪われたものを取り返す物語。

タスマニアにおける女性差別とアボリジニ迫害の歴史を現代へのメッセージと共に伝える傑作映画。

ただし、暴力、レイプ、虐殺を目に入れたく無い人は避けた方が良い映画です。
予備知識として映画をご覧になる前にタスマニアにおけるアボリジニ迫害の歴史と、女性(女囚)差別の問題をさらっておくと良いです。この映画の名前で検索すればNEWS weekの記事で読むことが可能です。
今作におけるナイチンゲールは鳥の名で、ヨーロッパ三鳴鳥に数えられるナイチンゲールとクロウタドリを主人公2人になぞらえてストーリーは進行します。重い話で誰かが悲しい思いをする映画が観たくない人には向いてません。決して復讐でスカッとしたいひとが観る映画でもありませんのでスカッとした復讐劇が観たい人は「ジャンゴ」はどうでしょう♪


以下内容に触れる部分もありますので先入観なしで観たい方はご注意下さい。



「クレアの胸の痛みとは?」
作中胸を痛がるようなそぶりや溢れ出る母乳が描写されます。これはおそらく母乳を飲んでくれる赤ちゃんが居ない為クレアのお乳は乳腺炎になった事の現れでしょう。乳腺炎ってけっこう辛くてお乳が張って痛くて悪寒や39度台の高熱まで出るんですね。こんな状態で追跡を続けるクレアの執念と、子供を失った哀しみを母しか分からない痛みで表現する本作は女性に対して作られている作品のように感じます。
この辺りは女性監督ならではの描写でしょう。

「モチーフとしてのクロドリ」
クロドリ、本作の場合クロウタドリは美しい声を持つ鳥ですがヨーロッパでは「悪魔、不吉、哀しみ、ずるさ」などの意味を持つ鳥として忌み嫌われ、シェイクスピアなんかもクロウタドリを嫌悪した描写をしています。この辺は黒人への偏見、差別とリンクするものがありますね。
ヨーロッパでは夜明け前に動き不吉を届ける鳥と言われているクロウタドリですが今作では正にそのイメージ通りの働きをしてくれます。

「白人にも黒人にも悪いものは居る。」
現代でもブラックライブズマター運動が示すように人種差別は根強く、経済や権力的にも二極化される社会の課題が叫ばれています。そんな現代に対し、この映画はかなり過激なメッセージを残します。
作中では悪いものは高齢の良識者が諭し直すとされています。それでも直らぬ悪いものの直し方を語るシーンがあるのですがそのシーンこそ現代への過激なメッセージでしょう。


「復讐の行い方」
本作は女性の復讐の行い方をメッセージとして伝えます。
クレアの復讐の行い方は必見です。



興味が湧いた方、アボリジニ迫害の歴史とクレアとビリーそれぞれの復讐の方法を是非ご覧下さい。
取り返すのは尊厳。
最後に朝日が登りますよ。
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