センター分けのましゅちゃん

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのセンター分けのましゅちゃんのレビュー・感想・評価

4.7
3時間半という長尺にビビり、
劇場での鑑賞に二の足を踏んでいると
配信が始まったため、ようやく鑑賞。

石油により、莫大な富を築いていた
原住民・オセージ族。
彼らの間で次々と人が
怪死する事件が多発。
やがてそれは原油の利権と受益権を
剥奪しようとする者たちによる
陰謀であることが明らかになってゆく。

冒頭の原油が噴き出すシーンから
一気に作品に引き込まれた。
オセージ族という原住民の生活が
徐々に外部からの人間に食い荒らされ、
蝕まれてゆくきな臭い様を
3時間半という長尺で
じわりじわりと描いていく
緊張感と重厚感に釘付け。
その長さを感じさせないドラマだった。

また白人の叔父と原住民の妻、
良心と野望の板挟みで、
どんどんとやつれていく
アーネストを演じた
レオナルドディカプリオは、
キャリア最高の演技と言われるだけあり、
リアリティと重厚感ある見事な表現力。

原作小説を読んでいたため、
比較的すんなりと物語に入り込めたが、
おそらく原作未読でも、
すんなりと入り込めるように
人間関係や当時のオセージ族の状況は
3時間の尺で丁寧に描かれている。

静かに時間が流れる穏やかな村に
次々と暴力と殺戮が侵食し、
やがて人々を狂わせていく姿がリアル。
これが実話ということもまた、
恐怖を増殖させている。
緻密に再現されていると思われる
当時のオセージ族の暮らしや様子も
映像として非常に映えるものであり、
その様子に似つかわしくない、
血と暴力の不協和音が
スコセッシ監督の描く暴力性の怖さ。

富や金は人を人でなくす、
そこにあるのはシンプルな豊かさへの欲。
人間がもつ至ってシンプルな欲の暴走が
もたらす恐怖を、
3時間半の長尺で描き切った大作に
息を呑んだ。