たく

罠のたくのレビュー・感想・評価

(1939年製作の映画)
3.6
連続行方不明事件の犯人を囮捜査によって突き止めようとする、ロバート・シオドマク監督1939年のノワール作品。タイトルの「罠」は、犯人が標的を捕まえるための新聞広告と、警察が犯人をおびき出す囮捜査の両方が重ねられてると思ったら、最後にまさかのもう一ひねりが入ってなかなか上手い作りだと思った。モーリス・シュバリエの軽妙な演技のせいか、全体にコメディ調が支配的で緊迫感はあまり感じられず。ピエール・ルノワールは巨匠画家オーギュスト・ルノワールの長男なんだね(映画監督ジャン・ルノワールの兄)。エーリッヒ・フォン・シュトロハイムが謎めいた執事役で存在感を示してた。

パリで若い女性ばかりを狙った行方不明事件が立て続けに起こってて、ダンサーのアドリエンヌの同僚も時を同じくして新聞広告に誘い出された直後に行方不明となる。ここからアドリエンヌが警察の捜査に協力するため、自らを囮として若い女性を求める新聞広告の誘いに応じていく展開。最初に誘いに応じた男性が、実は彼女を守る警察側の人間だったと分かる演出が洒落てる。アドリエンヌが次々と新聞広告の誘いに応じていくも、どれも当てが外れるというギャグ的な進行が続いて、やがてキャバレー経営者で女性に目がないロベールに出会ってからストーリーが動き出す。

ロベールがアドリエンヌにしつこく言い寄る様子が鬱陶しい一方で、悪い人ではなさそうだと感じさせて、おそらく犯人ではないであろうこの人物が筋書きにどう関わってくるのか見えないところがワクワクさせる。謎めいた執事も怪しい中、ついにロベールの部屋の引き出しから証拠品が出てくるまさかの展開で、ここで最後の「罠」が待ってるというオチだった。ロバート・シオドマクは「らせん階段」で連続殺人犯、「幻の女」でサイコパスを題材にしてて、人間の心の闇を扱ったノワール作品が多いんだね。
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