烏丸メヰ

オオカミの家の烏丸メヰのレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
3.5
我々は蜂蜜を採取し、歌とともに生きる善良なコミュニティですが、世間からは誤解されています。このたび修復されたコミュニティの保管映像をお見せしましょう……。
コミュニティから子豚を逃がし、お仕置きを嫌がって脱走したマリアという子がおりましたーー

そんな冒頭から、親しげにクリーンな雰囲気で始まる、南米のドイツ人コロニーである、実在の“コロニア・ディグニダ”をモチーフとした作品。
確かにストップモーションではあるが、例えば人形の“形を組み立てながら”とか、絵を“描きつつ消しつつ”といった、全シーンが破壊であり創造である、ライブペイントの様な映像の“生”があまりにも強烈。

作中で物語を見据える“オオカミ”は、言わずもがなコロニア・ディグニダを支配した人物だと思われる。
コロニアを離れて自由を求め「子豚」を愛し生きようとした少女マリアの結末と、これが
「コミュニティの教育映像」
である事を思うと背筋が冷たくなる。

「人形が怖い」とか「アニメが奇妙」とか、とっかかりや感想はそれでも全然悪くないし、映像を追いかけるだけでもかなり印象的で楽しめる。
しかし歴史背景含め、この作品を“人形怖い”だけでは私は表現しないし、人にそういった紹介はしたくない。

個人的には、あらかじめ「コロニア・ディグニダ」についての大まかな事柄(歴史や成立経緯等まで調べなくても大丈夫)を頭に入れておき、目の前で起こる映像が
“何をあらわしているのか”
“「オオカミ」は何を言わんとしているのか”
を想像しながら観るのがオススメ。
イメージヴィジュアルと作中の人形や子供達の外見(の現実的姿?)がみんな金色の髪に青い目、特に一番小さな男の子は巻き毛。
これだけで、この作品の語る残酷な事実が胸に突き刺さる。
烏丸メヰ

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