浅野公喜

実録 私設銀座警察の浅野公喜のレビュー・感想・評価

実録 私設銀座警察(1973年製作の映画)
3.6
終戦直後の混乱期における新橋や銀座に蔓延る愚連隊達の抗争を描いた、佐藤純彌監督の赤い文字でタイトルやスタッフが描かれるいかにもな東映バイオレンス。

冒頭からツネヒコ・ワタリ演じる退役軍人が娼婦と化した妻が目に入ると彼女と黒人兵士との赤ん坊を水たまりに叩きつけ殺し、妻もレンガらしきもので撲殺と豪快。彼が主人公になるのかと思いきや後にヒロポン中毒となり死人のような顔色で所々殺人をするだけで愚連隊も感情移入の余地なしなのでストーリーが頭に入ってこないのですが今作は同時期の東映作品の中でも特に濃い描写を楽しむのが吉。

けたたましいフリージャズが流れほぼ怒鳴ってばかりの演技にボカスカという殴打音にお馴染み雑な手持ちカメラワーク、爆発する民家(ここかなりの迫力)に割れたガラス瓶で顔を殴る、手を「揚げる」、銃で指が吹っ飛び紙幣が舞い散る中での集団強姦に純白のドレスが真っ赤に染まり幸せの絶頂からどん底に叩き落される結婚式での銃殺等その内容はある程度東映テイストに慣れていても胸焼け必至。

劇中では特に差別されたわけではないにせよ外国人兵士に対しても堂々刃向かったり攻撃する姿勢は、最近話題のアカデミー賞に代表される欧米人のアジア人差別に対してもなあなあでやり過ごす傾向のアジア人(日本人)が学ぶべき所なのかもしれません。
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