こたつむり

ストーリーテリングのこたつむりのレビュー・感想・評価

ストーリーテリング(2001年製作の映画)
3.7
♪ SOS SOS SOS SOS
  もう逃げ出したい朝から 
  ああ死にきれない夜から 這い上がってゆく

所謂、ねじりパン専用物件。
良い子は立入禁止です。雰囲気に流されやすい人や、ネット掲示板の嘘を見分けられない人もやめておいた方が良いです。地味に劇物なんですよ。

何しろ、物語の構成からして捻くれています。
前半を「フィクション」、後半を「ノンフィクション」と分けているのですが、この間に“繋がり”なんてありません。登場人物や舞台も全て別々です。

でも、それが何だと言うのでしょう。
「物語の諸要素は有機的に関係しなければならない」なんてルールはありません。分子が結合する意味(=構造ではない)だって人間は把握できていませんからね。物語が繋がらなくても仕方ないのです。

また、タブーに踏み込んでいく展開も同様。
人種、身障者、同性愛…誰もが腫れもの扱いしてしまう話題を取り上げ、意識的に“差別発言”を盛り込んでいきます。

それだってある意味現実と同じ。
差別が撤廃されるのは理想ですが、誰もが心の中で差別しているのが事実。重要なのはそれを表に出すか、隠しておけるか…だと思います。

それに真の悪は無知。
無自覚で他者を差別し、傷つけることが最も罪深いと思います。本作でも、11歳の子供が家政婦に対して辛辣な言葉を投げかけますが、アレが最も“ムカついた”場面でした。

なお、仕上げたのはトッド・ソロンズ監督。
『ウェルカム・ドールハウス』や『ハピネス』で顕著だったシニカルな筆致は相変わらずでした。

特に配役が露悪的ですよね。
メジャーな作品では中心に来ないような人物を“あえて”起用しているのですが、その辺りからして観客の“無意識的な選別意識”を嘲笑っているかのよう。いやぁ。本当に痛烈です。

まあ、そんなわけで。
自身の醜い部分を突き付けられる作品。
自分を省みたいとか、痛みに悦びを見出すとか、そんな姿勢でなければ観賞はオススメしません。少なくとも「胸糞だから最低映画」と判別するレベルならば時期尚早だと思います。熟成するまで待ちましょう。
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