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黒い画集 ある遭難のotomisanのレビュー・感想・評価

黒い画集 ある遭難(1961年製作の映画)
3.9
 おまえ俺の女房とできてんな。といわれて共に三大キレットのひとつを目指すか?その前に最も身近な山仲間で上司でもある人の細君を寝取るか?
 全然平気そうなヤツなら逆に小細工されて崖から落っことされるのが心配だろうが、普通人な(児玉)だから、慢心家の若輩が山の裁きに会ったかのようにする。道連れが生き延びればきっといい手記を残してくれるだろう。
 という悪党(伊藤)相手なのはあの冬の旅の半ばまでに既に感づいていただろうに登山道を戻らず北股本谷への45°の雪面を真っ直ぐ降りるのに(土屋)が同行したのは奇妙だろう。あのとき(伊藤)の悪意を確信し、崖を下る(伊藤)を見送るなら(土屋)は頭上から雪崩のきっかけを発すればいいだけだった。
 しかし、(伊藤)は(土屋)がそれをしない事を承知に違いない。そこで一つ賭けに出る。(児玉)殺害の動機を語りながら(土屋)の滑落の細工を施し(土屋)が自分を巻き込んで転落するかである。そしてもう一つ、その事変がきっかけの雪崩が自分をも殺すかどうかである。(児玉)の死をヤマに委ねたこの不潔さを今度こそヤマは受け入れまい。
 わずかタバコを一吸いする余裕も呉れない事に(伊藤)も驚愕しただろう。
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