Frapenta

地獄の黙示録 ファイナル・カットのFrapentaのレビュー・感想・評価

4.5
最高。
念願の鑑賞。

「朝のナパームは格別」いただきました。観る前まではこのセリフを言うキルゴア中佐がカーツ大佐かと勘違いしていた。そしてかの有名な本物のナパーム爆破はまさかの序盤。ここから一体どんだけ爆発するのだろうと意気揚々とするかもしれないが、一転派手さは失われていき、嵐が過ぎ去った後のような静謐さを漂わせていく。
それもそのはず、結局はあの大爆発はカメラで簡単に映せる程度の外堀りでしかなく、本作はその大爆発後の成れの果てに向けて舵を切るからだ。カメラクルーが行けるような場所は本当の闇ではない。闇の奥は静寂だ。何も語ってはくれない。自分自身で語り続けるしかない。そうでもしないと自分を保てないのだ。

多少の違い(カーツに愛人のような女性がいない)はあれど、基本的にはジョセフコンラッド「闇の奥」原作準拠で、舞台をベトナム戦争に移した作品だ。カーツ大佐の立ち位置のキャラも、原作ではクルツとなっており、カタカナでは違えどまるっきり同姓同名の人物だろう。原作で有名なセリフとして、「The horror! The horror!」があるが、光文社新訳だと「恐ろしい!恐ろしい!」、本作では「地獄だ……地獄だ……」となっている。訳者によって真っ二つに訳し方が割れる原文なのだが、本作は地獄のほうが邦題の兼ね合いもあって合致しているようにも思えた。


フランシスフォードコッポラ作品は有名度に反して、人の髄を抉るような哲学的な内容に徹した静かな作品が多いように見受けられる。ジェームズグレイもそのカテゴリーに属していると思うし、僕はかなり好み。

それにしても、本物のナパームは格別だ。高予算の匂いがする。
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