グラマーエンジェル危機一髪

Death Rite(英題)のグラマーエンジェル危機一髪のレビュー・感想・評価

Death Rite(英題)(1976年製作の映画)
5.0
“Les magiciens"はクロード・シャブロルにとって、自身で“世界的な駄作”と呼んだ「ブルース・ダーンのザ・ツイスト」と並んで思い入れもクソもない作品だそうで、日本における知名度もほとんど皆無と言っていいが、ある女性の死を予言する泥酔の老マジシャンと何故かそれを信じてしまった男、その死を迎えるらしい女性と微妙な雰囲気にある恋人の男性、この4人をめぐる物語は確かに締まりのない贅肉だらけの太鼓腹といった風であり、ただ編集や演出が面倒臭いから長回しを採用したとでもいう場面も随所に見られる故に、シャブロルに先鋭なスリラー作品を期待しているシネフィルには全く、全く以て薦めることのできない代物でありながら、微塵も共感の余地がない老魔術師のなけなしの誇りと血眼の殺意が人知れず交錯した時の感動たるや筆舌に尽くしがたいものであり、人間の惨めさが共感できなさを突き抜けた時に現れる境地を目撃したような無二の感覚を味わわされ、弛緩の極致であった物語の大部分との解離もあいまって、その美しさに心からの感動と畏敬を抑えることができなかった。傑作とは断じて言えずとも、我が心のシャブロル映画の1本。