かじドゥンドゥン

マヤの秘密のかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

マヤの秘密(2020年製作の映画)
3.8
アメリカで夫ルイスと幼い息子とともに暮らす、ルーマニア系アメリカ人の女性マヤ。幸せな家庭生活を享受していた彼女だが、或る日、工場から帰宅する一人の男性を目撃した途端、様子が一変。ポール・スタインマンを名乗るこの男を尾行・襲撃・拉致し、自宅の地下室に監禁する。

マヤが夫に明かすところによると、実は彼女の両親がロマ(ジプシー)で、第二次大戦中は親子ともどもナチスドイツの収容所にいた。ソ連軍によって解放され、妹とともにルーマニアを目指したものの、入国する手前で、酔ったドイツ兵たちに襲撃され、姉妹は暴漢の犠牲になった。15年前のその場にいた男が、この自称ポールだという。

地下室で拷問されるポール本人は、自分がスイス人の元役人で、戦争には行っていないと主張。夫ルイスは、ポールが嘘をついている証拠がないかぎり、下手に手出しはできないとマヤを制止する。マヤは、失踪したルイスを探す妻に近づくと、彼女がユダヤ系アメリカ人で、ポールとはヨーロッパで知り合って、急いでアメリカに移り住んだこと(つまりポールがアメリカ人への帰化を急いでいたこと)、戦争に行っていないはずのポールが15年来ある悪夢に苦しめられているらしいことを聞き出し、やはりポールが例の元ドイツ兵だと確信する。

マヤは、夫ルイスとともにポールを連れ出すと、ひとけのない場所で銃を突き付けて、真実さえ明かせば命は助けてやると脅迫。彼女は、ポールに対する復讐よりも、妹が襲われているときに自分がどう振る舞ったのか(逃げなかったかどうか)を知りたい様子。そしてポールが、ついに自分の嘘を認め、例の事件に居合わせたこと、そしてマヤは決して逃げなかったが、たまたま死んだものと誤認されて、射殺されずに済んだのだと明かす。これでマヤのわだかまり(妹を救えなかったことへの罪悪感)が解消されるが、そのやりとりをそばで聞いていた夫ルイスが突然ポールに発砲し、射殺する。こうして、夫に対するマヤの秘密が解消されると同時に、今度は夫婦の秘密が生じ、二人は遺体を埋めて何事もなかったかのようにその後の生活を送る。

マヤの汚された体と過去を許せず衝動的にポールを殺したのが、マヤ本人ではなく夫の方だったというところがミソ。