かわいい流れ蛸

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実のかわいい流れ蛸のレビュー・感想・評価

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はっきり言って冒頭の三島由紀夫の前説の時点で、そのカリスマ性にすっかり場が魅力されてしまっているように思う

木村のうっかり先生呼びしてしまうシーンなんかはまさにその表れで、全共闘の論客芥はそういった場の雰囲気に飲まれぬよう、どこか虚勢を張って三島を茶化しているようにもみえる

議論自体は観念的な話が多く難解ではあるものの、インタビュアーが現代から俯瞰した目線で噛み砕いて解説してくれるので思ったよりとっつきやすかった

自分はどちらかと言うと左派的な価値観の人間であると自負しているのだけど、芥の解放区に関する考えに、芸術家としての衝動性やプリミティブさは感じ取れるものの、社会運動としての持続性を重視しないのであれば、やはり三島の方が一枚上手と思わざるを得なかった

三島が昭和天皇に対して否定的な意見を持つことは知っていたけど、もっと複雑な愛憎、屈折した天皇観を持っているのだろうなというところが垣間見えて興味をそそる

また最後に全共闘の主要メンバーが誰1人敗北を認めなかったのも興味深い
自衛隊の説得に失敗し自決した三島由紀夫も、そして勿論あなた達も、まさにその"あやふやで猥褻な日本国"というものに敗北したのではないのですか?