ぴよ2522

キネマの神様のぴよ2522のレビュー・感想・評価

キネマの神様(2021年製作の映画)
3.5
原田マハさんの小説が好きでキネマの神様もすごく面白くて夢中で読んだなあ。
内容はもうほとんど覚えてないけどこんな話だったっけ?
映画が一番の娯楽だった、映画界が活気に満ちていた時代を知る山田洋次監督だからこそ見せられるその時代のリアリティ。
ノスタルジーの塊みたいな2時間だったな。
菅田将暉演じる若き日のゴウちゃんが愛嬌ある映画バカだったから映画界から去ったゴウちゃんのあまりに落ちぶれたクズぶりの高低差がエグすぎて中盤からラストにかけてのリカバリだけじゃ全然足りなかった。
いやあなた、あんだけクズだったのにこれで帳消しめでたしめでたしにはならないでしょーよ。
特に締め方には異議を申したい。
わかる。わかるよ?こうなるしかないよね。でも淑子ちゃんの長年の献身はどうなる?

晩年のゴウちゃんは志村けんさんが演る予定だったんですよね。
コロナ禍であんなことなってしまって沢田研二さんが後を引き受けられて。
たらればになっちゃうけど志村さんのゴウちゃんならもっと飄々とした愛嬌があるクズになったのかなと思うとそのバージョンも観てみたかったな。
沢田研二さんが良くないってことではなく、圧が強めで迫力があるクズだったから。

「出水監督の写真はラッシュで見ると平凡だろ」
「キャメラはいつも目の高さ
漠然としたロングショット
役者はそっけない芝居ばっかり
でもそのつまらないショットが全部繋がって1本の作品になるとこれがなんだかいいんだよ」
「カットとカットの間に神が宿るんだ
映画の神様が」

小津安二郎監督の映画を観るたびにこの淡々とした日常を写しただけの映画がどうしてこんなにしみじみと心に沁みるのかわからなかったけどこの会話でなんとなく腑に落ちたような気がした。
この会話を聞けただけでこの映画を観て良かったと思う。
小津安二郎監督作品を観たくなった。
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