青二歳

チェコの古代伝説の青二歳のレビュー・感想・評価

チェコの古代伝説(1952年製作の映画)
4.3
トルンカの歴史パペットアニメーション。チェコの建国伝説から始まり6つのエピソードを紡ぐ物語。オペラ史劇を観たような読後感。ファンタジックな表象も多いがスペクタクル史劇としても評価されてよいかも。
後半の2編はおいても、キリスト教国なのにアニミズムに満ちたチェコの中世世界は親しみやすい。素晴らしい。後半2編はキリスト教がある時代じゃないかなと思うけど、お告げの夢なんかは別段キリスト教っぽくないし、日本人には見やすい世界観だと感じました。

【おはなし】
1.チェコ建国の祖チェフの伝説、2-3.裁定者クロクとその娘リブシェ女王の伝説、4.勇士ツチラトのロマンス、5.賢臣ホリミールの黄金狂いの王への反逆、6.勇敢な忠臣たちの戦いの六遍。
日本で言えば古事記から忠臣蔵までをカバーしたようなおはなし。でも欧州の地域史って日本史と同じ感覚じゃ見れないだろうから、この映画って実は異民族や異なる王朝が混じり合ってるんじゃないの?とは思う…
ただ制作が1952年というのは気になりますね。当時のチェコで、自分たちのルーツを求める作品が作られたということ。トルンカが元にした本はチェコ民族運動の高まる19世紀末にアロイス・イラーセクが書いた“チェコの伝説と歴史”(2011年に北海道大学出版から分厚い翻訳が出た)。
この19世紀末に編纂された“歴史”がチェコ民族運動の支えだったのでしょうか。今ではこれがチェコの子供達が教科書で読み親しむおはなしのようです。

トルンカの長編は彼の音楽性を堪能できますね。もうオペラ史劇みたい。チェコの伝説的な英雄が立ち上がる時、死んで次の世代に託す時、戦い、和解、弔い…おそらくトルンカがチェコ史の重要局面と考えるシーン。その音楽と歌が素晴らしい。
そして時代の転換点で必ず飛び立つ鳥の表象も力強く美しいです。1952年に作られた意味を想います。
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